インフルエンザ急性感染症やノロウイルス感染症などに加えて、新型の感染症・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が登場し、私たちの暮らしの中で感染症対策の必然性が高まっています。
しかし、感染症対策に関する情報はたくさん世の中にあふれています。何を参考にしたらいいか迷ってしまい、かえって不安が高まってしまいかねません。
この記事では、感染症対策に関する、似たようなことばの違いなどを整理して情報を確認します。また、家庭でできる感染症対策とその注意点をお伝えします。
正しい方法を知って自分や家族の健康を守るとともに、こころや時間に余裕のある毎日を送りましょう。
ことばの違い|除菌と殺菌は違う
除菌や殺菌、抗菌などの用語を、感染症などの専門家が使ったり、身近な店の商品名などでみかけたりすると、ひとつひとつの用語について「何が違うのだろう」と感じることはありませんか?
ずは、それぞれのことばの意味について確認をしてみましょう。
※以下の説明では、ウイルスや細菌を「菌」として扱っています。カビや酵母は真菌と呼ばれる仲間ですが、ここでは真菌は省きます。
除菌
除菌は、限られた空間や、物などから菌を取り除いて数を減らし、清潔さを高めることです。
研究などにおいて、除菌は使われないことばです。しかし、身近に手に入る洗浄剤など、私たちの暮らしに身近な分野で使用されています。
殺菌
殺菌は、菌を殺すことを指しています。しかし、どういった菌を対象とするか、どの程度殺すかまでは、意味に含まれていません。
殺菌の用語は、薬機法※の対象となる医薬品(病気などの治療を目的とした薬)や医薬部外品(治療というよりは防止・衛生を目的としたもの)では使用できます。
ただし、薬機法の対象とならない化粧品や洗剤、漂白剤などでは、使用できません。
※薬機法(旧・薬事法):正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。2014年(平成26年)11月、薬事法が改正され、名称変更と共に施行された。
消毒
消毒は、人間にとって害のある菌を殺したり除去したりして、人体に害のない程度まで減らすことや、毒性を失わせることをいいます。
殺菌と同じく、薬機法で定められた医薬品や医薬部外品でのみ使用できることばです。
滅菌
滅菌は、菌を全滅させることを指しています。日本薬局方(にほんやっきょくほう:医薬品に関する品質規格書)では、菌の生存する確率が100万分の1以下になることを滅菌と定義しています。
人間の体にはさまざまな菌が存在しています。滅菌を達成するためには、病原性の有無にかかわらず人体に存在するすべての菌を殺さなければなりません。
そのため、滅菌とは「手術器具の滅菌」など、道具に対して用いられることばです。
抗菌
抗菌は、菌の増殖に抗う(あらがう)ことです。つまり、菌の増殖を予防することを意味します。
「抗菌素材」など、幅広い商品に使用されている用語です。
経済産業省の定義では、抗菌の対象は、菌の中でも細菌のみとしており、ウイルスはふくまれません。
「殺菌」「消毒」の表示は医薬品や医薬部外品にのみ
「殺菌」や「消毒」は、薬機法で定められた医薬品や医薬部外品にのみ使用できることばで、化粧品や健康食品などには使えません。
薬機法は、医薬品や医療機器などの製造や表示、販売、流通、広告などについて細かく定めた法律です。
医薬品や医薬部外品にあたる製品は、人体への作用や効能が確認されていたり、作用が緩やかであっても、使用目的が明確に定められたりしています。
化粧品や健康食品などは医薬品と異なる位置づけであり、ラベルや広告で使用できることばも異なります。
家でこころがける除菌方法
日常生活の中では、ウイルスや細菌などの感染症の対策には、家庭の中に菌を持ち込まない工夫や、菌を取り除く「除菌」をこころがけるとよいでしょう。
自宅でもできる除菌方法として、とくに注目したいのが「手洗い」と「除菌剤を用いた拭き掃除」です。
こまめな手洗いをしよう
家庭に菌を持ち込まないために、最も大切なことは、こまめな手洗いです。
正しい手洗いを1度行うことで、手指についているウイルスは0.001%まで減少するとの報告があります。
また、2度洗いをすることで、さらにウイルスは減少します。
推奨される手洗いの時間は約20秒程度とされています。
正しい手洗いとは、下記の通りです。
- せっけんやハンドソープをよく泡立てる
- 手のひらや甲だけではなく、指と指の間や、爪の中、手首までしっかりともみ洗いする。(60秒)
- 流水で十分にすすぐ(15秒)
手指に菌が付着したまま、顔を触ったり、食事をとったりすることは、感染リスクを高めます。
外出から帰宅した後や、共有のものを触った後など、こまめに手洗いをしましょう。
※参考:国立医薬品食品衛生研究所
こまめな拭き掃除をしよう
家庭の中で共用の場所は、アルコールや、次亜塩素酸ナトリウムを薄めた液体などの除菌剤や除菌シートを使って、こまめに拭き掃除をすると良いでしょう。
家庭の中でよく触る場所としては、次のようなものがあります。
- ドアノブ周辺
- トイレ内の便座などの設備
- 洗面台などの水道のハンドル
- キッチンの戸棚、冷蔵庫やレンジ
- 窓枠
- 廊下や階段などの手すり
- ゲーム機本体やコントローラー
- テレビやエアコン、トイレ洗浄などのリモコン など
家族構成や、家の間取りなど、個々の家庭で重点的に除菌が必要な場所は異なってくるでしょう。生活を振り返りながら、どこを拭いたら良いのかを確認してみてください。
家庭で使用しやすい除菌剤
ウイルスや細菌を除去するための拭き掃除では、除菌剤を使用します。いくつかの除菌剤は、ドラッグストアやスーパーなどで手に入りますが、それぞれ注意点があります。
除菌剤の特徴を知って、正しく使用しましょう。
アルコールを含む除菌剤
※引用:エーザイ
アルコールは、さまざまな細菌やウイルスに対して消毒や除菌効果があります。消毒や除菌目的のアルコールは、一般的にはエタノールを使用します。
ただし、十分な消毒・除菌効果を得るためには、約70~80%の濃度が重要です。
市販の製品は濃度をチェック
アルコールは化粧品や雑貨にも含まれています。アルコール含有と記載があっても、除菌には適さない濃度の製品もあります。
使用目的や使用方法、アルコールの濃度などをチェックしてから購入することをおすすめします。
せっかくの除菌剤の効果がなくなるため、すでに濃度が調整されている製品を薄めて使用することはやめましょう。
無水エタノールは濃すぎるため調整
濃度の高いアルコールとして、無水エタノールが販売されています。しかし、そのままの濃度では、消毒作用が働く前にアルコール分が液体から気体に変化してしまい、十分な除菌効果は得られません。
水と混ぜて適切な濃度に調節をしましょう。
市販の無水エタノールから消毒用アルコールを調整する場合は、以下の分量で混ぜましょう。
- 水 100ml
- 無水エタノール 400ml
家庭で調整する場合の水は、水道水で十分です。容器は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)といった、エタノールに強い素材のものを使いましょう。
アルコールを含む除菌剤は、火にも注意が必要です。無水エタノールは気体になりやすく、引火もしやすいです。消毒用アルコールを家庭で調整するときは、火から離れた場所で行いましょう。
使用の際にも、ガスコンロやタバコの火の近くなど、火を使っているときは使用しないように気をつけましょう。
次亜塩素酸ナトリウム液
※引用:栗本薬品工業
次亜塩素酸ナトリウムは、いわゆる「塩素系漂白剤」に含まれており、市販の塩素系漂白剤を薄めて除菌液をつくることができます。複数の商品が販売されているため、除菌液の作り方は各メーカーのホームページを確認するといいでしょう。
次亜塩素酸ナトリウム液の安全な使用のためには、いくつかの注意点を守りましょう。
※参考:花王 花王の塩素系漂白剤で次亜塩素酸ナトリウム0.05%、0.1%の液はつくれるの?
使えるのは拭き掃除のみ
次亜塩素酸ナトリウムは、直接肌に触れたり体内に取り込んだりすると、健康に悪影響があります。そのため、手指の消毒には使えません。
スプレータイプは、吸い込む可能性が高くなり、危険です。メガネやマスクを装備したうえで、人のいる場所に噴霧したり、顔を近づけたりしすぎないように使用しましょう。
スプレータイプのものは、換気をしっかり行いながら、あくまでも拭き掃除に使います。
金属や繊維、木工製品には使用しない
金属や繊維、木工製品に次亜塩素酸ナトリウムを使用すると、化学変化を起こして腐食させたり、変色させたりすることがあります。そのため、金属の物品や家具などには使わないようにしましょう。
そのほかの素材に使用したときも、仕上げに水拭きをしましょう。
劣化しやすいので、使うたびに作るようにする
次亜塩素酸ナトリウムは、時間の経過とともに分解されていきます。とくに直射日光や、高温の環境では、劣化が早くなります。
使うたびにこまめに作り直すことが必要です。
界面活性剤
経済産業省によって、洗剤に含まれる複数の界面活性剤が新型コロナウイルスの感染症対策に有効と判断されました。界面活性剤は、水と油といった混じり合わないものを、つなげるような物質です。せっけんをはじめとする洗剤の主成分となっています。
経済産業省が公表した、除菌剤として使える界面活性剤は、以下の5種類の界面活性剤に限られています(2020年5月現在)。これらの界面活性剤が含まれている製品は、それぞれの製品の使用方法に沿いながら除菌剤としても活用できるのです。
- 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
- アルキルグリコシド(0.1%以上)
- アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
- 塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
- ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)
経済産業省のサイトでは、有効と判断された界面活性剤のリストも公表されています。購入や使用の際は参考にするとよいでしょう。
台所用洗剤を使って代用
家具やおもちゃなどの拭き取りに使える住宅・家具用洗剤が手に入らないときは、台所用洗剤を薄めることで代用できます。ここで使用する台所用洗剤は、食洗機用のものではなく、スポンジやタワシなどに染み込ませて使うタイプの洗剤です。
台所洗剤を用いた作り方は、以下の分量です。
- 水500ml
- 台所用洗剤 小さじ0.5〜1(2.5g〜5g)
洗面器などで混ぜ合わせた後、キッチンペーパーや布に染み込ませ、液がたれない程度に絞って拭き取りをします。5分程度たったら、キッチンペーパーや布で水拭きをし、さらにキッチンペーパーなどで乾拭き(からぶき)を行います。
洗剤を薄めた液を染み込ませた布などでの拭き取り後は、放置するとプラスチックなどが傷むことがあるため、水拭きや乾拭きが必要です。いずれも手指や肌には使用できません。
次亜塩素酸水は注意が必要
次亜塩素酸水は、手指消毒薬としてスーパーやドラッグストアなど商業施設の入り口に配置されたケースもあり、使用した人もいるでしょう。
しかし、次亜塩素酸水の使用には注意喚起がされています。
次亜塩素酸水とは
次亜塩素酸水は殺菌料のひとつで、大腸菌や黄色ブドウ球菌、カビなどの殺菌を目的に、食品製造などで使用されています。
食品製造で使用される次亜塩素酸水の製造方法は、厚生労働省の資料では次のように規定されています。
「次亜塩素酸水は、塩酸または食塩水を電気分解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液」
また、次亜塩素酸水には、強酸性のものや微酸性のものがあり、それぞれ製法や塩素の含量などが規定されています。食品製造において使用する場合は、食品が完成する前に次亜塩素酸水を洗い流して除去することが必要です。
※参考:厚生労働省 次亜塩素酸水
感染症対策としての有効性は未確認
消毒用アルコールが不足したり、次亜塩素酸ナトリウムは人体に使えなかったりするなどの理由から、次亜塩素酸水への注目が高まっていました。
しかし、2020年5月29日付けの経済産業省の資料において、次のような内容が示されました。
- 次亜塩素酸水の新型コロナウイルス感染症への有効性は確認されていない
- 次亜塩素酸水の安全性については根拠が不明なものが多い
- 空間に噴霧された次亜塩素酸水を吸い込むことは、重大な健康被害を与える可能性がある
以上のように、次亜塩素酸水は感染症対策としての有効性が明らかになっていません。誤った使用方法で健康被害が起こる可能性すらあります。
※参考:NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構) 次亜塩素酸水
加湿器に入れることは絶対止めよう!
すでに、ミスト状の次亜塩素酸水を吸い込んだり、目に入ったりすることによる健康被害の報告もみられています。水の代わりに加湿器に入れたり、空間にスプレーをしたりして広げることは絶対に止めましょう。
なお、拭き取りによる感染症対策への効果については、現在も確認中です。
専門業者による除菌清掃サービスもある
「子育てや仕事で忙しい」
「自己流でしっかり除菌できているのか心配」
「除菌方法が難しい」
など、自分で除菌を行うことに不安や手間を感じる人は、専門業者による除菌サービスを利用する方法があります。
専門業者に依頼するメリットとしては次のようなものが考えられます。
- プロの目による細やかで的確な除菌
- 手に入りづらい除菌剤を持参してくれる
- 道具の準備も不要
ただし、価格やサービス内容は専門業者によって異なります。すぐに依頼をするのではなく、まずは、いくつかのサービスを比較してみることをおすすめします。
まとめ
手洗いや拭き掃除は、毎日の暮らしの中で取り入れやすい感染症対策です。
拭き掃除では、身近で手にはいりやすいものが除菌剤として使用できます。しかし、注意しなければならない複数のポイントがあり、大変だと感じる人もいるでしょう。
また、しっかり除菌をしたいのに、時間にもこころにも余裕がなく、不安に思っている人もいるかもしれません。
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