新常識?網戸に鍵を取付けて防犯対策

住宅への侵入犯罪は、窃盗を目的としたものがほとんどですが、被害は金品だけにとどまりません。
たまたま居合わせた、あるいはちょうど帰宅した住人と出くわして、窃盗犯が居直り強盗となり事件が重大化するケースも。侵入犯対策には万全を期したいところですが、その対象は窓が中心となります。
雨戸やシャッターという強力な設備を使用すれば、窓の防犯は心強いものの、やはり採光や通風という住まいの快適性も両立したいものです。

この記事では、住宅を狙う侵入犯のプロファイリングも行いながら、窓まわりのセキュリティをさまざまな方法から考えてみます。締め切った暗い窓でなく、心地よい風を通しながら就寝する方法まで。現在の窓の防犯でアナタにあったやり方を見つけてください。

狙われやすい家の特徴

暗い道

安心と安全、そして団らんや快適を求めて私たちが暮らす住まいを狙う犯罪といえば、「侵入犯罪」がその代表格。「侵入犯罪」とは、凶器を示すなどして住人を脅し、金品を強奪する「侵入強盗」と空き巣などに代表される「侵入窃盗」に大別されます。

「侵入強盗」発生場所の75%以上は、商店、旅館・ホテル、パチンコ店、金融機関、一般事務所等で占められており、住宅を対象にしたものは約23%。対して、「侵入窃盗」の一般住宅での発生率は6割近くに達し、一戸建て住宅が狙われたものは全体の4割以上にのぼります。

年間約4万件、毎日107件以上も発生している「侵入窃盗」は住まいへの犯罪のなかでももっとも脅威となるものです。その対策こそが、日々の暮らしの安全と安心にとって重要なテーマとなることがおわかりいただけますでしょうか。

※参考:平成28年・警察庁統計

それでは、「侵入窃盗」を許してしまう住まいの要因とはなんでしょうか。

侵入方法の第1位は「無施錠」

鍵

侵入窃盗犯の手口を知れば、おのずと住まいの防犯対策は決まります。警察庁統計を参照すると、窃盗犯の住宅侵入の手段で一番多いのは意外にも「無施錠」です。
その割合は一戸建て・共同住宅を通じて全体の4割以上という高率で、やや拍子抜けしますが鍵のかけ忘れが「侵入窃盗」を招く最大の要因となっています。外出の際の戸締まりをあらためて肝に銘じるだけでなく、ゴミ出しやすぐ近くのコンビニ等に出かける際にも施錠の習慣はしっかりと身につけたいものです。

侵入犯は、ほんの数分のスキをも見逃しません。ゴミ出しの際、ご近所さんと立ち話をしていた10分程度の間に空き巣の被害に遭ったという事例もあります。ほんの至近距離のわずかな時間でも、家を空けるときは必ず鍵をかけるよう習慣づけましょう。

※参考:平成28年・警察庁統計

侵入方法の第2位は「ガラス破り」

ガラス割り

住宅侵入犯の手口で無施錠に続くのがガラス破りです。その割合は一戸建て住宅で36.6%にものぼり、低層の共同住宅で29.6%、中高層(4階以上)の共同住宅で16.9%と階が高くなるにつれて下がりますが同じ傾向となっています。
さらに、その侵入口は「窓から」が最多となっており、一戸建て住宅の場合は実に56.5%もの割合を占めます。住宅の窓にもっとも広く使用されている板厚3~5mmのフロート板ガラスであれば、ドライバー1本で短時間のうちに破ることができ、たやすく侵入を許します。

火災時の高温で割れ落ちて延焼の拡大を防ぐ「網入りガラス」や、耐風圧を高めた強化ガラスも防犯目的のガラスではないので注意が必要です。これらは、破損しても破片が飛び散りにくい、あるいは破片が粒状になって安全であるといった効果を目的としているので、バール等で打撃を加えれば簡単に破ることが可能です。

侵入犯が破りやすい窓は、庭やバルコニーに面した「掃き出し窓」や1階の「腰高窓」などとされていますが、高層階の共同住宅でも屋上や非常階段を経由してベランダから侵入する事例があるように、高窓や2階以上の窓でも油断はなりません。足場となるような設置物や構造がないか見直しておきましょう。

※参考:平成28年・警察庁統計

侵入者はこんなスキを見逃さない「防犯意識の低い家」

侵入窃盗犯の多くは、事前に下見をしながら「侵入しやすい家」を物色しています。そのポイントは、「貧弱な雨戸やシャッター、窓枠、格子」「補助錠を取り付けていない窓」など設備面での防犯対策も見ていますが、それ以前の前提として「人通りや人目が少ないか」「隣近所からの見通し」という周囲からの視線を非常に気にします。警察庁の統計でも、侵入までに時間がかかることと「声をかけられる」など近隣住民からの目で犯行をあきらめる傾向が強いと示されています。

住まいの外周を高い塀や植栽で囲むことは、敷地外からの視線を遮り、プライバシーを確保するには適していますが、防犯を目的に考えるとむしろマイナスです。なぜなら、高い塀で侵入者が周辺から目に付きにくくなるため「侵入しやすい家」となるからです。枝葉がこんもりと茂る庭木が多く植えられた住まいも、侵入者に隠れ場所を提供することになります。

住まいの防犯には、下見の時点から侵入をあきらめさせるよう「死角をつくらいない」ことが大切です。フェンスは人の頭が通らないような幅の狭い縦格子で、植栽は手入れのしやすい低木を選ぶなどして周囲からの見通しを意識することが防犯には効果的です。また、2階への足場となるような庭木やエアコンの室外機などにも注意が必要です。侵入口となる場合の多い掃き出し窓の近くでは、身を潜めるために利用されやすいので特に注意しましょう。

※参考:平成28年・警察庁統計

「見通しの悪さ」を解決できない「死角の多い」敷地条件

見通しが悪い道

一方、塀や植栽など設備面に注意しても解決できない「見通しの悪さ」「死角の多い家」も存在します。「旗竿地」に代表される敷地条件がこれに該当します。
旗竿地は表通りからの騒音や視線が遮断されるため、静かでプライバシーが確保されることがメリットです。しかし、周囲から見通しが悪いため侵入者にとっては好都合であるのも事実です。ただし、周囲を建物に囲まれた旗竿地の場合は、侵入経路が敷地形状の“竿”の部分に当たる通路部分に限定されるので、この特徴をいかした防犯対策が考えられます。

玄関までの通路に防犯カメラを設置して侵入者にプレッシャーを与えます。カメラはダミーでも効果が出るでしょう。夜間は人が近づくと反応するセンサーライトを設置するのも有効です。また、歩くと足音がきしんで鳴る、音砂利を敷き詰めておくのも侵入をためらわせる心理的効果があります。

就寝中が危ない! 在宅中でも窃盗犯は狙っている

就寝中の人

ここまで、無施錠やガラス破りなど、侵入の手口を紹介しながら防犯対策を考えてきました。住宅を対象にした窃盗犯といえば、不在時に侵入し金品を盗む「空き巣(あきす)」ばかりをイメージしがちですが、これは間違いです。住宅対象侵入窃盗で空き巣が占める割合は6割以上と最多ですが、夜間の就寝時に侵入する「忍込み(しのびこみ)」が約2割、在宅時の食事や昼寝などのスキを見計らって侵入し、盗みを働く「居空き(いあき)」という手口も5%ほど発生しています。

在宅中に侵入される「忍込み」「居空き」では、その侵入手段が「無施錠」で占められる割合が非常に高いのが特徴で、それぞれ71.7%、80.3%となっています。空き巣の場合は無施錠(38%)とガラス破り(42%)が拮抗するのに対し、就寝中や食事等で気を取られているスキを突き、家人のいない部屋を物色する「忍込み」「居空き」には、在宅時でも油断することなく施錠することの大切さがうかがえます。

※参考:平成28年・警察庁統計

女性の1人暮らしで無施錠の就寝は危険!

死角や足場の確認のほか、近隣からの人目などを下見する侵入者は、その家の家族構成なども念入りにチェックしています。無施錠を狙って侵入することが圧倒的に多い「忍込み」「居空き」の場合、特に注意が必要なのは1人暮らしの女性です。犯行の目的が、金品を知られずに盗むことだけでなく、暗証番号を聞き出して現金を引き出すため在宅時を狙ってキャッシュカードを奪うなどの事案が発生しているほか、女性への暴行に及ぶこともあります。

春や秋、外気が心地よい季節には通風目的で窓や玄関を開け放しておきたいこともあるでしょう。しかし、防犯目的としては細心の注意を払い、就寝中は特に無施錠ですごさないことが大切です。

侵入口として狙われる窓の防犯対策

ここまで、住宅への侵入犯罪のさまざまな手口から発生要因を確認し、その対策を考えてきました。そして、その中から住まいへの侵入を許してしまう要因で意外にも多いのが「鍵のかけ忘れ」ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。無施錠には、「うっかりかけ忘れ」も多いものの、「ほんのわずかの外出だから」「在宅しているから」という油断も小さくはないことがわかります。

思いもかけない一瞬のスキだからこそ、侵入者はそこを狙っています。レアケースだとしても、現金や預金通帳、カード、パスポートなどが盗まれては困ります。パソコンが被害に遭った場合は住所録などの個人情報も一緒に盗まれて、二次被害の恐れもあります。盗まれた金品は回復可能でも、侵入されて屋内を荒らされた恐怖感や「再び、誰かが侵入してくるのではないか」という不安感に長期間悩まされます。

また、在宅時や帰宅時に侵入者と鉢合わせになり、居直った窃盗犯が強盗に変身する事例もあります。金銭的な被害だけでなく、女性への性犯罪を含む身体的被害を受ければ一生消えない心の傷も残ります。
これらのことからも、住まいを狙う窃盗犯が侵入口としてもっとも利用している窓への施錠対策が、被害を未然に防ぐことに役立ちます。その対策方法を考えてみましょう。

防犯ガラス・防犯フィルムの活用

防犯フィルム

第1章では、「網入りガラス」や「強化ガラス」はバール等の打撃によるガラス破りには効果がないことを紹介しました。これらのガラスは防災対策を目的としたもので防犯効果はないものと心得ましょう。防犯効果が保証された窓用ガラスは、主に次の2つです。

防犯ガラス

2枚以上の板ガラスの間に柔軟で強靱な特性をもつ樹脂フィルムを中間膜として挟み、加熱・圧着させたものです。中間膜の厚さが増すほどにバール等の打撃物が貫通しにくくなり、大きな音を気にせず乱暴にガラスを破壊しようとする「打ち破り」やドライバーの先などを用いて静かに行おうとする「こじ破り」にも、手を差し込んで解錠するための十分な大きさの穴があかない効果があります。

防犯フィルム

「CPマーク」でも知られる官民合同会議認定の「防犯建物部品」としては、板厚5mmのフロート板ガラスの全面に総厚350µm以上のポリエステル製フィルムを1枚貼りすることが条件になっています。
クレセント錠(窓の室内側に取り付けられた半円形の回転鍵)付近に部分的に貼っただけでは1~2回の打撃で穴が空き、そこからフィルムを剥がすことも可能なので防犯効果は期待できません。
全面1枚貼りもDIYでの施工は可能ですが、十分な水抜きがなされていない場合などは本来の防犯性能が発揮されないこともあります。専門の施工業者に施工を依頼したほうが安心です。

雨戸・シャッター、面格子を活用する

金属製の雨戸やシャッターのほか、掃き出しの必要がない高窓や水回りの小窓なら面格子を取付け活用することで、乱暴なガラス破りにも強力な防犯効果を発揮します。デメリットはリフォーム対応では設置費用が高額になることと、締め切っておくことで採光性や通風性が悪くなることです。

網戸も施錠して防犯対策

第3章では、窃盗犯が侵入口として狙う窓への防犯対策を紹介しました。主に窓ガラスへの対策となりましたが、窓まわりの設備で防犯の盲点になり、対策を施しにくいものに網戸があります。

網戸は、繊細な樹脂が素材となっているため鋭利な刃物で簡単に切り裂けるほか、フレーム部も一般に貧弱なので取り外しや破壊も容易で、基本的に防犯機能はもちあわせていません。そのため、外出時はもちろん他の部屋で食事をとるためその部屋を離れる場合などに、窓を開け放ち網戸を閉めただけというのは防犯上とても危険です。

就寝中も同様ですが、しかし、通風機能を考えると網戸を有効活用したいのも事実です。外気の心地よい季節やエアコンの冷房の風が苦手な人は、夜間に窓を開けたまま眠りたいという思いが強いはず。また、防かびやウイルス対策などの目的から、窓を開け放って換気することも住まいの衛生と快適を維持する上では必要です。
本来、防犯上は非常に弱点となる網戸の機能を強化する工夫はないものか考えてみましょう。

網戸にカギを取り付ける

網戸

ホームセンターやインターネット通販で、網戸を外から開けられないようロックする補助錠が販売されています。
「網戸ロック」や「網戸ストッパー」などの名称で売られているものがそれで、価格も数百円から1000円程度と非常に安価で、取り付けも粘着テープで貼るだけと簡単です。サッシ窓の補助錠としては、警察防犯協会推薦の防犯器具にも指定されていて、網戸の枠の上下2箇所に設置すれば簡易的に外から開けなくできます。

ただし、この補助錠を取り付けても樹脂の網を切り裂くことができるなど、網戸の構造的弱点が大きく改善されるわけではありません。防犯面で過度な信頼を寄せるのは禁物です。利用目的は主に、子どもやペットの飛び出し防止用という安全・安心目的です。

ただし、この補助錠を取り付けることで解錠のためひと手間かかるようになります。侵入に時間がかかるようになることは、侵入者に対する心理的プレッシャーにもなります。在宅時に通風のため網戸を利用しながら窓を開けている場合には、一定の防犯効果が期待できるアイテムになるでしょう。

防犯機能をもったステンレス網戸に変更する

ステンレス

近年では、通風性を損ねることなく防犯機能も万全な強固な構造の網戸が開発されています。
「ステンレス網戸」がそれで、網の部分には線径0.8mm程度の高強度ステンレスワイヤーを編み込んでいます。そのため、ナイフで切り裂くこともハンマーなどの鈍器で力任せに破ることもできません。フレームも破壊に強い高強度のアルミ材を使用しており、2重ロック付きのため網戸も窓も開けられないよう対策されており、窓まわりのセキュリティを大幅にアップさせます。

メリットは、防犯上有効な構造だけにとどまらず、サッシ枠の規格サイズにあわせてバリエーションが用意されているので取り付けも既設の網戸と入れ替えるだけと簡単です。

デメリットは価格が高価なこと。一般的な引違い窓に対応するもので4万程度から大きなサイズでは10万程度となり、住まい全部の窓に対応させるとなると数十万円の予算が必要になる場合もあり得ます。
しかし、その強靱な構造から既存のガラス窓との組み合わせで事実上の2重窓となります。ガラスの2重窓とは異なり、防音効果や断熱効果はありませんが通風性を確保した上での防犯効果は上回ります。
強風やそれに伴う飛来物にも耐風・耐久性が確保されるので、防災設備としても有効です。事実上の2重窓として考えればコストパフォーマンスは悪くありません。
換気をしながら外出できる、冷房を止めて心地よい夜風を感じながら安眠できる。そんな、快適生活にしっかりとした防犯機能を組み込める心強い設備として非常に有効です。

まとめ

侵入犯罪対策で窓まわりのセキュリティを高める方法は、2重ロックの設置や防犯ガラス・防犯フィルムの活用などの既存の方法から、高いセキュリティ機能をもたせた網戸の設置などの新しい方法まで、多岐にわたります。

どの方法で自宅の窓まわりのセキュリティを高めるかは、ライフスタイルや予算などを踏まえて検討することが必要です。

方法を決めたら、「どこのメーカーの製品を用いるか」「どこの業者に設置を頼むか」なども考えなくてはなりません。セキュリティ関連のメーカーや設置を担当する業者はたくさん存在するからです。

自分たちのニーズや予算に合った方法で、窓の防犯を高められるとよいですね。

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