これから太陽光発電システムを導入する場合に、どれぐらいの頻度でメンテナンスが必要か、またどれぐらいの費用がかかるか、気になる人も多いでしょう。
今回は太陽光発電のメンテナンスについてくわしく解説。メンテナンスの頻度やメンテナンスが必要な理由をわかりやすく説明します。さらにメンテナンス方法やメンテナンス費用についても紹介。自分でできるメンテナンスもあるため、この記事を参考に、普段から異常がないかチェックしてみましょう。
早めに不具合を見つけることで、故障や事故など大きなトラブルに発展するのを防ぐことができます。太陽光発電システムを導入しようか検討中の方も、設置後のメンテナンスの参考にしてください。
太陽光発電のメンテナンス頻度は?
住宅などに設置される出力容量が50kW未満の太陽光発電システムは、少なくとも4年に1度を目安にメンテナンスを行いましょう。(50kW以上の大規模なシステムの場合は、年に2回以上の点検がガイドラインで義務付けられています。)
とくにFIT認定(余った電力を電力会社に買い取ってもらうための認定)を受けて売電する場合は、定期的なメンテナンス(保守点検)が法律(改正FIT法)で義務化されています。メンテナンスを怠ると、FIT認定が取り消されて売電できなくなる可能性もあるため、注意が必要です。
メンテナンスは以下のタイミングで行うとよいでしょう。
- 設置後1年:初期不良がないかの点検
- 2年目以降は少なくとも4年に1度の点検
- 9年目の点検:メーカー保証が切れる前の点検(10年で切れることが多い)
- 19年目の点検:出力保証が切れる前の点検(20年前後で切れることが多い)
点検頻度は、お住まいの地域や気象条件などでも変わります。塩害が起きやすい沿岸部や、落雷・積雪の多い地域では、設備が腐食しやすいです。また大きな地震や台風などの災害後は、パネルや配線の破損などのトラブルが起きている可能性があります。設置環境や状況に応じてメンテナンスの回数を増やし、劣化や故障がないかを自主的に点検することが大切です。
太陽光発電のメンテナンスが必要な理由
長寿命といわれる太陽光発電システムですが、屋根の上や住宅から離れた場所に設置されていることが多く、目視での確認は難しいケースが多いです。以下のような目的でトラブルを防ぐためにも、定期的に点検やメンテナンスを行いましょう。
発電量の低下を防ぐため
メンテナンスが必要な理由のひとつが、発電量の低下を防ぐためです。
太陽光発電システムは年月が経つにつれて劣化が生じ、発電量も少しずつ低下していきます。一般的には、年間0.5%前後劣化するといわれており、10年で5%程度劣化します。
しかし発電効率の低下は、経年劣化だけが原因とは限りません。屋外に設置されている太陽光発電パネルには、鳥のフンや枯れ葉などの汚れが付着しやすいのが特徴です。汚れが付着した部分は日光が当たらず影になるため、発電効率が下がる原因になってしまうのです。
さらに長時間汚れが付着したままの状態は、発電量が低下するだけではなく、その部分だけ電気の流れが悪くなり、大きな抵抗がかかる「ホットスポット」と呼ばれる現象が起こります。熱をもって高温になり、故障や火災の原因にもなるため、注意が必要です。
定期的にメンテナンスをして汚れを落とすことで、発電効率の低下を防げるでしょう。
大きな故障に発展するのを防ぐため
太陽光発電設備の汚れや小さな傷を見つけて修理することで、大きな故障や不具合が起こるのを予防できます。
屋外に設置されている太陽光発電パネルは、枝やゴミが飛んできて破損することがあります。小さな傷でも放置すると破損箇所が広がったり、割れ目から雨水が浸入して被害が拡大したりすることがあるのです。
発電した電気を家庭などで使えるように、直流から交流に変換するパワーコンディショナ(パワコン)も注意が必要です。ファンにホコリが蓄積して目詰まりを起こすと、発電効率が低下したり、水滴が浸入して腐食や故障したりする恐れがあります。
部品交換だけで対処できるトラブルも、メンテナンスをせずに放置すると被害が拡大して、高い費用がかかってしまうケースもあります。小さな傷や汚れのうちに発見してメンテナンスすることで、大きな故障や不具合に発展するのを防げるでしょう。
第三者に被害を与えないため
メンテナンスを行わずに稼働し続けると、太陽光発電システムが故障するだけではなく、以下のように被害が拡大する恐れがあります。
- 強風でパネルが飛んで、人や物に当たる
- 緩んでいた金具が飛んで歩行者に当たり、ケガをさせてしまう
- 破損したパネルから発火した
- ねずみが配線をかじって漏電し、スパークして落ち葉に着火した
- パワーコンディショナの設備不良によって火災が発生した
- 水没した太陽光発電に人が近づいて、感電事故が起きた
太陽光発電システムの不具合によって、漏電や発火が起こる可能性があります。さらに感電事故や火災、山火事や延焼を招くリスクもあるでしょう。第三者への被害を起こさないためにも定期的に点検行い、劣化や故障を見逃さないことが大切です。
太陽光発電のメンテナンス方法
太陽光発電のメンテナンス方法を紹介します。基本的には国家資格がなければ太陽光発電システムのメンテナンスはできませんが、自分でできるメンテナンスも紹介します。
目視点検と精密点検
異常がないかをチェックする太陽光発電の点検方法は、一般的に「目視点検」と「精密点検」の2種類があります。
目視点検
目視点検は、実際に目で見て確認する点検方法です。たとえば以下のような項目をチェックして、異常がないかを確認します。
- ソーラーパネルに破損や汚れがないか
- モニターで発電量が極端に減ったなどの異常がないかを確認する
- ボルトなどの金具にサビや緩みがないか、はずれていないか
- パワコンが破損していないか、フィルターが目詰まりしていないか
- パワコンから異音や異臭、発煙がないか
- 雑草や周りの木々で影ができていないか
- ケーブルに破損がないか
電気系統を触る点検は専門業者に依頼する必要がありますが、パネルの汚れや雑草の茂り、モニターでの発電量チェックなどは、自分でも目視で日常点検が可能です。早く不具合を見つけるためにも、普段からチェックするとよいでしょう。
精密点検
精密点検は専用の機器を使った電気点検で、目視点検よりも精密で詳細な点検が可能です。サーモグラフィで異常がないかチェックしたり、電流値を測定して正常に発電できているかなどをチェックしたりします。目視で確認してもわからない配線などの不具合を特定できるため、必要な補修を行うことができます。
点検には、年間契約などで行う「定期点検」と必要に応じてその都度行う「スポット点検」とがあります。定期的に点検できる定期点検は、状況が悪化する前に不具合を発見できるのがメリットです。
スポット点検は、原因がわからない不具合が起きたときに原因を特定するために行います。ほかにもセカンドオピニオンや、定期点検の業者選びのお試しとして活用できるでしょう。
草刈り
太陽光パネルを庭などに設置した場合、周辺の草刈りも大切なメンテナンスのひとつです。点検時に発電所に立ち入って、細部を点検するには、草刈りが欠かせません。
雑草が生い茂ったまま放置すると、パネルに影ができて発電量が低下する恐れがあります。さらに害虫が増えるなどの理由から近隣トラブルに発展するケースもあるのです。
草刈りは自分でもできるメンテナンス方法のひとつですが、電気系統付近の草刈りは誤って配線を切ってしまう恐れがあります。故障させるだけではなく感電の恐れがあり危険なため、電気系統付近の草刈りは業者に依頼しましょう。
パネル洗浄
太陽光パネルに付着した汚れを落とすには、パネル洗浄のメンテナンスが必要です。鳥のフンや黄砂など、少しの汚れであれば雨で洗い流されますが、雨がなかなか降らない時期などは、頑固な汚れとなってしまうことがあります。ホットスポットが起きる前に、パネルの汚れを落としましょう。以下の2種類が主な洗浄方法です。
- マイクロファイバーモップを使った手作業での洗浄
- 高圧洗浄機の回転ブラシを使った洗浄
一見簡単そうに思えるパネル洗浄ですが、素人が洗浄するとパネルの表面を傷つけてしまうリスクがあります。また屋根などの高所にパネルが設置されている場合は、転落して大ケガをする危険性もあります。パネル洗浄は業者に依頼しましょう。
太陽光発電のメンテナンス費用
太陽光発電のメンテナンスにかかる費用相場は、以下のとおりです。パネルを設置している屋根が急勾配で足場を組む必要がある場合などは、追加で5万~10万円程度かかるでしょう。
メンテナンス内容 | 費用相場 |
---|---|
目視点検 | 1万~4万円程度 |
精密点検 | 8万円前後 |
草刈り | 7万~10万円程度 |
パネル洗浄 | 3万~6万円程度 |
また発電所の規模によって、太陽光発電の点検・メンテナンスにかかる費用相場は以下のように変わります。点検内容やメンテナンスの頻度によっても費用は変わるため、目安として参考にしてください。
メンテナンス内容 | 費用相場 |
---|---|
住宅用太陽光発電(10kW未満) | 1回あたり5万~10万円程度 |
産業用太陽光発電(50kW未満) | 年間10万~15万円程度 |
産業用太陽光発電(50kW以上) | 年間100万~200万円/MW(メガワット) |
メンテナンスは素人が無理をして作業すると、感電事故や屋根の上からの転落事故などの危険性があります。また太陽光発電の点検は法律で国家資格を持った人が行う決まりになっているため、業者に依頼しましょう。
まとめ
太陽光発電は定期的にメンテナンスすることで、深刻な故障や不具合に発展するのを防ぐことができます。太陽光発電(50kW未満)のメンテナンスの頻度は、以下のタイミングで行いましょう。
- 設置後1年:初期不良がないかの点検
- 2年目以降は少なくとも4年に1度の点検
- 9年目の点検:メーカー保証が切れる前の点検(10年で切れることが多い)
- 19年目の点検:出力保証が切れる前の点検(20年前後で切れることが多い)
「汚れや破損がないか、目視での確認」「モニターでの発電量のチェック」「草刈り」は自分でもできる場合が多いメンテナンス方法です。それ以外の太陽光システムの点検・メンテナンスは、業者に依頼する必要があります。
普段から自分でできるメンテナンスや定期点検を行いましょう。また異常が起きたときは、被害が拡大する前に、すぐに補修をすることが大切です。