太陽光発電の年間メンテナンス費用は約6.9万円!作業内容など解説

住宅用太陽光発電システムについて「しばらく放置しているけど、メンテナンスは必要?」
「メンテナンスにかかる費用の相場はいくら?」などのことでお困りではないでしょうか。

2017年4月からの改正FIT法によると、売電を行うのであれば住宅用太陽光発電にも、保守点検及び維持管理が義務化されました。定期的な点検とメンテナンスが継続的に必要となります。
しかし、太陽光パネルは屋根にあり、きれいな状態か、汚れているかなど自身では確認できないため、日常的に状態を意識している方は少ないでしょう。

この記事では、太陽光発電システムを使用しつづけるにあたり、保守点検やメンテナンス作業の費用について解説します。維持管理は、作業内容によって業者に依頼する時期や費用が異なるため、予め準備しておくと急な出費で慌てる心配がありません。

また、自分でできる日常点検についても解説するので、ぜひ、この機会にお役立てください。

【作業別】太陽光発電のメンテナンス費用の相場

お金の計算

太陽光発電のメンテナンス費用の相場について、作業別で解説します。太陽光発電で必要になることが多いメンテナンスは、大きく分けて以下の3つです。

作業内容 費用相場
定期点検 約5万円
太陽光パネル清掃 基本料金(0~数万円)
+パネル枚数分(500~1,000円 / 枚)
パワーコンディショナー交換 約20~35万円

※参考:経済産業省 調達価格等算定委員会 令和6年度以降の調達価格等に関する意見

パワーコンディショナーとは、太陽光パネルで発電した電力を、家庭内で使用できるように変換したり、制御したりする機器です。

パワーコンディショナー

太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの製品には、メーカー保証が付いています。各メーカーによって保証期間や内容、対象製品の範囲が異なるので、無償で修理や交換が受けられる範囲を点検前に把握しておくとよいでしょう。

以下で、各作業について解説します。

定期的な保守点検

施工業者による保守点検を4年に1度受け、太陽光発電システムに関する機器の状態を確認するのが望ましいです。売電をする場合には、4年に1度の点検が法的に義務化されました。

保守点検の費用の相場は、1回あたり約5万円です。保守点検の項目については、日本電気工業会と太陽光発電協会が、ガイドラインを細かく設定しています。
点検作業の内容としては、以下のようなものがあります。

  • 太陽光パネルの表面の汚れ、破損の有無の確認
  • 太陽光パネルの架台の腐食、サビの有無の確認
  • ケーブル配管の損傷、断線の有無の確認
  • ケーブル保護の確認
  • パワーコンディショナーの動作確認
  • モニターの表示確認

目視と測定による点検で、正常にシステムが稼働しているか判断し、不具合があれば修繕します。

参考:一般社団法人電気工業会・太陽光発電協会 太陽光発電システム保守点検ガイドライン
一般社団法人太陽光発電協会 太陽光発電システムの不具合事例とその対処例

太陽光パネルの清掃

太陽光パネルの清掃は、年に1~2回の頻度で業者へ依頼するのが理想です。

忘れてしまっていたり忙しくて難しかったりした場合は、定期点検時に汚れの具合を確認してもらってから清掃の依頼するのがよいでしょう。

料金は、基本料金にパネル枚数分の追加料金を設けている業者が多いです。独自のキャンペーン価格で基本料金0円とする業者もあり、価格帯が大きく異なるので、サービス内容をよく確認したうえで申し込んでください。

パネルの枚数は住宅によりけりですが、10~15枚前後のことが多いです。また、洗浄に使用する洗剤の種類によっては、数千円の追加料金が発生したり、足場代として数万円の費用が必要になったりするケースもあります。

太陽光パネルの清掃は資格不要なので、実績があり信頼できる清掃業者や太陽光発電専門の業者に依頼してください。

パワーコンディショナーの交換

パワーコンディショナーは屋内に設置されており、ブレーカー(分電盤)の近くにあるのが一般的です。交換費用の相場は約20~35万円で、機種によって価格が相場から前後します。交換時期は、10年から15年が目安です。

パワーコンディショナーの交換作業は、電気工事士法により第一種または第二種電気工事士の資格を有する者が行う必要があります。無資格者による電気工事は、「三月以下の懲役または三万円以下の罰金」が科せられる違反行為なので、資格を有する専門業者に依頼しましょう。

※参考:e-GOV法令検索
電気工事士法

1年あたりの太陽光発電メンテナンス費用の目安は約69,000円!

業者と電卓

住宅用太陽光発電は、3~5kWのシステム容量(ソーラーパネルの発電可能な発電量を表す数値)のものが設置されることが多いです。
仮にシステム容量を5kWの設備と想定した場合、年間.\のメンテナンス費用目安は約6万9千円となります。

費用の内訳は以下です。

  • 4年に1回の定期点検(1回あたり約47,000円)
  • 10年に1回のパワーコンディショナー交換(1回あたり345,000円)

経済産業省の調達価格等算定委員会によると、定期点検費用の1回当たりの相場は約4万7千円、パワーコンディショナーの交換は約34万5千円でした。この計算では、定期点検は4年に1度、パワーコンディショナーの交換は10年に1度と想定します。

また、住宅用太陽光パネルの発電量やサイズはさまざまですが、仮に1枚400Wとすると、5kWで約13枚分の料金が発生します。太陽光パネル清掃は1年に1回と想定し、基本料金を仮に1万円、パネル1枚につき1,000円とすると、基本料金(1万円)+パネル13枚(1万3千円)=2万3千円が毎年かかる計算です。

上記をふまえると、1年間にかかる5kWの太陽光発電のメンテナンス費用は、以下のとおりです。

(定期点検費用4万7千円×5回+パネル清掃2万3千円×20回+パワコン34万5千円×2回)÷20年間=約6万9千円/年

ただし、上記に加えて、点検のための足場の設置や、太陽光パネルの故障などで交換が必要になった場合、さらに追加料金が発生します。また、蓄電池も住宅に設置している場合は、そちらのメンテナンス費用も別途かかってきます。

※参考:経済産業省 調達価格等算定委員会 令和6年度以降の調達価格等に関する
意見

売電するなら太陽光発電のメンテナンスは法的義務

解説する男性

売電する場合には、FIT法に基づき、点検・維持管理が法的義務となります。

FIT法とは、固定価格買取制度(Feed-in
Tariff)の略称で、太陽光発電で発電した電気の売買に関する法律です。自宅で発電した電気を売るには、FIT法に基づいて設備認定を受けなければなりません。FIT制度が利用できると、10年間の売電単価が保証されます。

2017年4月に「FIT法」という法律が改正されて以降、以下のいずれかに当てはまる太陽光発電設備は、メンテナンスが法的義務となりました。

  • 発電した電気を売る場合(売電する場合)
  • システム容量が50kW以上の設備の場合

住宅用の太陽光発電システムであっても、FIT法に則り売電を行い続ける場合は、設備の維持管理を怠ると、指導や改善命令、発電事業者としての認定が取り消される可能性もあります。

売電ができなくなると、太陽光発電のメリットが1つ失われてしまうので、規定を守るようにしましょう。

※参考:資産エネルギー庁 改正FIT法による
制度改正について

※参考:e-Gov法令検索 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法

住宅用太陽光発電にもメンテナンスが必要な理由

太陽光発電のある住宅の模型

太陽光発電のメンテナンスを行った方がよい理由として、改正FIT法を守ることだけでなく、トラブルの早期発見や発電性能の低下防止などのメリットがあります。

FIT制度を利用(売電)しておらず、システム容量が50kW未満の住宅用太陽光発電の場合は、メンテナンスの義務はありません。しかし、十分に太陽光発電を活用するために、メンテナンスで異常がないか確認するのがおすすめです。

きちんとメンテナンスをすることで、次のようなメリットがあります。

トラブルを早期発見

定期点検を受けると太陽光発電システムのトラブルを早期発見でき、修理費用の負担を最小限に抑えられます。

修理を終えて正常な状態での稼働時間が長くなれば、発電効率もさらに良くなるでしょう。太陽光発電システムに起こるとされるトラブルの例として、以下が挙げられます。

  • 台風や強風の影響による太陽光パネルなどの破損
  • 太陽光パネルの異常発熱(ホットスポット)の発生
  • ケーブルの破損、断線
  • パワーコンディショナーの動作不良

機器類のトラブルを放置しておくと、漏電が発生するなどして火災の原因になりかねません。
速やかに交換が必要なケースもあるので、普段見えない箇所であり、なおかつ専門家視点での判断が必要なケースがあることから、定期的な点検を怠らないようにしましょう。

※参考:一般社団法人太陽光発電協会 太陽光発電システムの不具合事例とその対処例

発電性能の低下防止

定期的な点検で、太陽光発電の発電性能の低下の原因を見つけ出せれば、早期にトラブルを防止できます。

太陽光パネルの経年劣化や不具合、パワーコンディショナーの故障などは、専門業者に点検を依頼することで発見が可能です。早いうちに部品のトラブルに気づけられれば、修理費を最小限に抑え、安定した発電量を保てます。

メンテナンスコストを節約するために自分で点検や清掃を検討する方もいますが、専門的な知識不足により不具合を発見できなかったり、清掃後の足場で滑ったりと、大変危険なので地上から目視できる範囲にとどめてください。

太陽光発電のメンテナンス頻度やタイミングの目安

カレンダー

住宅用の太陽光発電システムが販売された当初は、メンテナンスは重要視されていませんでした。太陽光発電の普及拡大のために「メンテナンスフリー」とうたわれ、「初期費用はかかるが維持費は不要」と広まったと考えられます。

しかし、現在は2017年4月の改正FIT法によりメンテナンスが法的に義務付けられ、売電をする場合は4年に1度定期点検を行う法的義務があります。保守点検やメンテナンスのタイミングは、次のとおりです。

保守点検

保守点検の頻度は、4年に1度が理想です。業者による保守点検を受けるのが、太陽光発電を維持管理していくうえで最も重要でしょう。

経年劣化とともにトラブルの回数が増える可能性も高まりますが、専門家に見てもらうことで、安心して太陽光発電を使い続けられるようになります。

太陽光パネル清掃

多くの太陽光パネルは、自浄作用が備えられているので、雨が降ればある程度きれいな状態を保つことが可能です。しかし、太陽光パネルの設置角度によって傾斜が弱く、汚れが流れきらずに表面に溜まってしまうケースもあります。年に1~2回きれいに清掃できるのが理想です。

太陽光パネルの洗浄を行うおすすめの季節は、梅雨明けごろです。春に飛来する黄砂や、梅雨の曇りが続く時期を終えて、太陽光のエネルギーを十分吸収できるようになるまでに、ピカピカにきれいにしておきましょう。

その他

太陽光発電のメンテナンス費用は、パネル清掃と定期点検の他に、システム設備の状態に応じた部品の交換や修理などがあります。それぞれのパーツの最適な交換時期は、専門業者に見てもらうのがよいので、定期点検のタイミングで必要があればお願いしてください。

点検まで待てない気になる点があれば、早めに業者に確認してもらいましょう。

自分でできる太陽光発電の点検について

住宅用太陽光パネルは屋根の上にあるので、自己点検には限界があり危険も伴います。自分でできる日常点検として、まずは次の2つを習慣にしてみてください。

住人がいつもとの違いにいち早く気づける項目なので、日頃からこまめに異常がないが確認しておきましょう。

モニターで発電量をチェック

モニターのチェック

太陽光発電のモニターをチェックし、正常に発電しているか確認します。万が一、発電量が急激に変化したり停止したりした際は、太陽光パネルの不具合や故障の恐れがあるので、施工事業者に点検を依頼連絡しましょう。

早めに改善することで、太陽光発電のパワーを発揮できます。

パワーコンディショナーの動作確認

パワーコンディショナーが正常に動いているか確認をしましょう。

パワーコンディショナーの運転時に、いつもと違う異常な音が出ていないか、エラーメッセージが表示されていないかなど、簡単に確認できる範囲で点検を行ってください。

まとめ

今回は、太陽光発電設備のメンテナンス内容や費用について解説しました。太陽光発電のメンテナンス費用は、約69,000円(1年あたりで換算)がかかります。
ただし、それとは別に足場代や補修費用も発生することがある点に注意しましょう。

適切なメンテナンスを行うことは、太陽光発電の効果を最大限に発揮するために非常に重要です。節電や節約につなげるためにも、定期点検と日ごろからのメンテナンスを怠らないようにしましょう。

自分で屋根に登って点検や清掃を行うのは、大変危険です。メンテナンスは、安全確保と不具合箇所の見落としがないように専門業者に依頼しましょう。

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