自宅で電気を生み出せる太陽光発電ですが、
- 「うちには太陽光発電設備があるのに、電気代が発生しているのはなぜ?」
- 「太陽光発電で電気代は無料になるはずじゃないの?」
と疑問に思っている人もいますよね。
当コラムでは、太陽光発電で電気代が無料になる場合とならない場合、電気代を節約する方法などを紹介します。
さらに売電収入についても解説するので、太陽光発電をお金面で最大限に活用したい人は、ぜひお読みください。
太陽光発電で電気代は無料(0円)になるもの?
太陽光発電を導入するにあたって、電気代が0円になることを期待した人も多いでしょう。しかし、電気代が無料になるかどうかは、いくつかの条件をクリアする必要があります。なかでも、太陽光発電の発電量をいかに上げるかがポイントです。
電気代が無料になるのは、太陽光発電の発電量が家庭の消費電力量以上になる必要があります。そのためには、次のような条件が大きく関係します。
- 天気
- 気温
- ソーラーパネルの陰の有無
- 太陽光発電システムの性能や状態
- 家庭の消費電力量
天気
太陽光発電は、太陽の光を利用して発電するシステムです。そのため天気によって発電量は大きく増減します。
たとえば、晴れの日の発電量を100%とすると、曇りの日で30%、雨の日で10%ほどです。晴れていて太陽光が降り注いでいる日は発電量が多く、天気が悪く日射量が少なければ発電量も少なくなります。
気温
太陽光発電の発電量は気温による影響も大きいです。太陽光パネルは高温に弱い性質をもちます。太陽光パネルは25度のときに発電量がピークとなり、25℃を超えると、発電量がピークよりも下がってくるのです。
そのため30度を超える真夏では発電量は低下します。
ちなみに、日照時間や気温の面から最も発電量が多くなる時期は5月頃です。
ソーラーパネルの陰の有無
太陽光パネルに陰があると発電量が大幅に低下します。パネルに陰があると太陽光を吸収できず、またパネルの一部でも陰ができると、パネル全体の発電量に影響を及ぼす仕組みだからです。
そのため発電量を上げるには、太陽光パネルに建物や樹木、電線などの陰がないことが重要です。
太陽光発電システムの性能や状態
太陽光発電システムの性能や状態は、発電量に大きく影響します。太陽光パネルの寿命は20年以上とされていますが、経年劣化によって徐々に発電量は低下します。
また、太陽光パネルに蓄積する砂ぼこりや花粉なども劣化の原因です。
家庭の消費電力量
太陽光発電によって電気代を無料にするには、太陽光発電の発電量が、家庭の消費電力量を上回る必要があります。
このため、家庭の消費電力量が多いほど、太陽光発電の発電量が家庭の消費電力量を上回るのが難しくなり、電気代が無料になりにくいです。
一般的な家庭の消費電力量と、住宅用太陽光発電システムの発電量の目安は以下になります。
戸建て住宅における1カ月の消費電力量目安
世帯人数 | 1カ月の消費電力量 |
---|---|
2人世帯 | 331kWh |
3人世帯 | 386kWh |
4人世帯 | 436kWh |
住宅用太陽光発電システムにおける発電量目安
システム容量 | 1日の発電量目安 | 1カ月の発電量目安 |
---|---|---|
1kW | 約2.7kWh | 約81kWh |
3kW | 約8.2kWh | 約246kWh |
4kW | 約11kWh | 約330kWh |
5kW | 約13.7kWh | 約411kWh |
太陽光発電協会によると、太陽光パネルはシステム容量1kWあたり1年間の発電量は1000kWhが目安とされています。そのため、1日の発電量は1000kWh÷365日=2.7kWhです。これに基づき、1カ月における発電量の目安は「システム容量×2.7kWh×日数」で算出することができます。
なお、仮に太陽光発電の発電量が家庭の消費電力量を上回っていたとしても、蓄電池など電気を蓄える設備がなければ電気代を無料にするのは難しいでしょう。
電気を蓄える設備なしで太陽光発電により電気代がまかなえるのは、太陽光発電が発電できる日中です。電気を蓄えておける蓄電池がない家庭では、夜間や天気が悪い日など、発電量が少ない時間帯やゼロの時間帯に使用する電力にはお金がかかってしまいます。
※参考:消費電力量目安:東京都家庭のエネルギー消費動向実態調査|東京都環境局
太陽光発電協会
太陽光発電で電気代をできるだけ0円にする方法
太陽光発電を導入したからには、電気代をできるだけ節約したいですよね。
ここからは太陽光発電の発電効率を上げ、可能な限り電気代を0円に近づける方法を紹介します。
蓄電池を設置・活用する
蓄電池とは、太陽光発電で発電した電力を蓄えておける装置です。蓄電池がない家庭は、蓄電池を設置することで、電気代を節約することができます。
日中、発電した電力はまず家庭の電気として消費され、使いきれずに余った電気を蓄電池にためておけるからです。
蓄電池にためた電力を、太陽光発電が発電できない夜間や発電量が少ない日に使用することで、電気代を浮かすことができます。
また、蓄電池は災害時にも便利です。停電が起きた場合でも、蓄電池があれば蓄えた電気を家庭で使えるから安心です。
蓄電池を設置することで、発電した電力を無駄なく活用でき、電気代の節約につながるでしょう。
電気料金プランを見直す
ライフスタイルに合わせて電気料金プランを見直すことは電気代節約に効果的です。多くの電力会社は利用者の生活時間帯や電気使用量に合わせたお得なプランを用意しています。
たとえば、日中は太陽光発電で電力をまかなうことができるのなら、夜間の電気代が安いプランに乗り換えることでお得に電気を使用できます。
太陽光発電利用者向けの電力プランを設けている場合もあるので、電力会社を比較し、料金プランの見直しを検討してみましょう。
太陽光発電システムを点検・メンテナンスする
太陽光発電システムを点検したり、メンテナンスしたりすることは、発電効率を上げることにつながります。なぜなら太陽光パネルの汚れは発電量低下の原因になるからです。
屋外に設置してある太陽光パネルは、花粉や黄砂、鳥のフンなどさまざまな汚れが付着します。汚れが蓄積すると、蓄積した汚れが太陽光をさえぎってしまうため、発電量が低下したり故障したりする恐れがあるのです。このため、定期的なパネルの清掃が必要です。
また、太陽光パネルだけではなく、パワーコンディショナーや接続箱に不具合があると、せっかく発電した電力を家庭で使用できません。
パワーコンディショナーとは、太陽光パネルで発電した電気を家庭の電気に変換する機器です。接続箱とは、太陽光パネルで発電した電気をパワーコンディショナーに送り込む役割をします。どちらも発電量に大きく影響するので、状態を確認することが大事です。
自宅で使う電力量よりも、太陽光の発電量が多ければ電気代は節約できます。太陽光発電量を多くするためにも、定期的な点検やメンテナンスを計画するとよいでしょう。
太陽光発電でガス代も抑えられる場合がある
太陽光発電の発電量が消費電力量を上回っていて電力に余裕がある場合、ガスを電気に切り替える選択肢もあります。
ガスを電気に切り替えることで、現在ガス代として発生している光熱費を、太陽光発電の電力でまかなうことが可能です。たとえば、ガスコンロをIHクッキングヒーターに切り替えることで、発電した電力を使うことができます。
ただし、ガスコンロからIHクッキングヒーターに切り替えるには20万円ほど工事費用がかかります。ガスを電気に切り替えるメリット・デメリットを理解した上で、光熱費節約の1つの手段として検討してみるとよいでしょう。
太陽光発電の売電収入の目安
「太陽光発電で発電した電力を売ったらいくらになるのだろう?」と、売電収入の目安が気になる人もいますよね。
太陽光発電の発電量が家庭の消費電力量よりも上回る場合、余った電気を電力会社に売って、売電収入を得る方法があります。ここからは売電価格や売電収入の目安を説明しますので、参考にしてください。
売電価格を決めるFIT制度
使い切れず余った電力を電力会社に売るときの売電価格は、FIT制度により定められています。
FIT制度とは固定価格買取制度のことです。発電した電力を一定期間、固定された価格で電力会社が買い取ることを国が保証しています。このFIT制度のおかげで、安定した売電収入を得ることができます。
売電価格は、FIT制度に申請した年度の単価で異なります。たとえば、2020年に申請した場合の売電価格は1kwあたり21円、2022年では19円、2024年では16円です。売電価格は固定価格であり、FIT期間中の10年間はずっと同じ価格で買い取りされます。
1kWあたりの調達価格(調達期間・交付期間:10年間)
年度 | システム容量10kW未満 |
---|---|
2020年度 | 21円 |
2021年度 | 19円 |
2022年度 | 17円 |
2023年度 | 16円 |
2024年度 | 16円 |
2025年度 | 15円 |
売電価格が徐々に値下がりしているのは、国民の経済的負担を抑えるためです。なぜなら
電力会社が電気を買い取るときの費用を国民が一部負担しているからです。
毎月の電気料金表を見ると、電気使用料にプラスして「再エネ賦課金(ふかきん)」という名前で徴収されているのがわかります。この国民の負担を抑えるために、改正FIT法が制定され、売電価格は毎年見直されています。
※参考:太陽光発電について|資源エネルギー庁
2024年度以降の価格表|経済産業省 資源エネルギー庁
売電収入の計算方法
売電収入の目安は次の計算方法で算出できます。
①システム容量
太陽光パネルが最大どれだけ発電できるかを表したもので、各家庭によって異なります。一般家庭ではシステム容量3〜5kWの太陽光発電システムが多く設置されており、10kW未満の家庭がほとんどです。自宅のシステム容量をあてはめて計算しましょう。
②1kWあたりの年間予想発電量
太陽光発電協会によると、システム容量1kWあたり1,000kWhが目安とされています。あくまでも目安なので、実際の発電量がわかれば、その数値で計算しましょう。
③売電比率
太陽光発電システムで発電した電力のうち、何%売電するかを表わしたものです。発電した電力のすべてを売電するのではなく、余った電力を売電します。経済産業省によると売電される割合は68.8%となっています。
④売電価格
2024年時点で1kWあたり16円です。
例として、システム容量5kWの太陽光発電システムがある家庭が得られる売電収入の年間目安をこの計算式で算出してみます。
- 1. システム容量:5kW
- 2. 1kWあたりの年間予想発電量:1000kW
- 3. 売電比率:68.8%
- 4. 売電単価:16円
上記を計算式に当てはめると、以下のようになります。
これにより、システム容量5kWの太陽光発電システムがある家庭が得られる売電収入の年間目安は55,040円となります。この売電収入を光熱費にあてることで、電気代を0円に近づけることが可能になるでしょう。
ただし、この数値はあくまでも目安であり、各家庭のシステム容量や実際の発電量によって売電価格は異なります。
自宅の発電量や消費電力量を把握すれば、発電量から消費電力量を引いたものに売電単価を掛け、売電収入の金額を割り出せます。
まとめ
太陽光発電システムの導入で、電気代をできるだけ0円に近づけるためには、発電効率を上げることや発電した電力を無駄なく活用することがポイントです。
発電効率をあげるためには、太陽光パネルの定期的な点検やメンテナンスが効果的です。
また夜間の消費電力を抑えるために、蓄電池の導入や電気料金プランの見直しをしてみるとよいでしょう。
発電した電力を無駄なく活用するために、余った電力を売ることで売電収入を得ることができます。売電収入を得られれば、電気代を0円にすることも可能ですね。