ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインという言葉をご存知でしょうか。
年齢・性別や文化、障害によらず、どんな人にも使いやすいデザイン、というものです。
それって、バリアフリーデザインと同じでは?と思われるかもしれませんね。
世の中の大半の物は、健康な状態の大人が使用する場合を想定して作られています。それを高齢者や障害のある人にとっても使いやすいようにデザインしよう。そうした考え方がバリアフリーデザインです。
ユニバーサルデザインという思想の対象はより広いものです。たとえば、手洗い器の高さは子供が使うにも不自由しないか。
設備機器のスイッチや操作パネルの表示は、使用言語の異なる外国人でも理解できるか。身長差の大きい男女のどちらかに負担が生じないキッチンの作業台の高さは…。
など、バリアフリーの思想に加え、より様々な配慮をしたデザインになります。
浸透してきたバリアフリー
高齢化社会を生きるという自覚から、バリアフリーの必要性は理解が進んでいます。
住宅リフォームといえば、バリアフリーリフォームを思い浮かべる方もいるでしょう。
住宅の長寿命化を目指す社会背景からも、老後の住まいへの関心は高まっています。老後資金を考えるときも、住宅リフォームは想定したいところですね。
住宅のユニバーサルデザインが大切な理由
これからの住宅には、さらにユニバーサルデザインの視点が求められると感じます。
というのは、住宅の使われ方がより多様になっていくと思われるからです。
これまでの暮らしの風景とはどんなものだったでしょう。夫婦が新しい家に暮らし、子供が生まれます。
小さい子供のお風呂や食事は、親が見守る中で行われます。子供が成長して独立したら、夫婦二人の生活に戻り、広い家に住み続ける。
だいたいこうした流れが「標準的」とされてきました。
ここでは、家に住む人は常に「ひとつの家族」に限られています。さらに、料理や掃除、洗濯などでの主たる住宅の「使い手」は成人女性と想定されます。
これからの住宅ではどうでしょう。次のような風景が浮かんできませんか?
- 夫婦のどちらも、同じような頻度で家事をおこなう。
- 子供が簡単な家事を負担する。
- ベビーシッターや家事代行サービス業者が日常的に家事をする。
- そのサービスをおこなうのが、外国人の場合もある。
- シェアハウスなどのかたちで複数の世帯が住宅を共有する。
- 子供が巣立った後に、自宅をそうしたシェアハウスや寮として貸し出す。
こうした想像をすると、あらゆる人に使いやすい住宅の必要性が感じられませんか?
具体的な配慮のポイント
実際に住宅で取り入れられているユニバーサルデザインどのようなものでしょう。
たとえばキッチンでは、
- 流し台上部の棚が電動で昇降する
- 作業台のふちに手すりがついていて、つかまったり体をもたれたりできる
- 椅子、車椅子を使いながら作業できるよう、シンク下に空間があいている
こうした工夫を取り入れたシステムキッチンが商品化されています。
他の場所にも、様々な配慮が可能です。
- 照明のスイッチを大きくし、子供や目の悪い高齢者にとって押しやすくする
- 洗面台の流し下にスライド式の踏み台を収納する
- クローゼットのハンガーパイプの高さを、身長や服の丈にあわせて調節する
これらは一例ですが、自宅にもこんな機能が欲しくなってきますね。
キーワードは「高低差」「調節可能」「視認性」「操作性」といったところでしょうか。
ユニバーサルな視点が住宅の価値を高める
もしこれからご自宅のリフォームや買い替え、新築のご予定があるとしたら…
一度ユニバーサルデザインという視点でプランを見つめてみてください。今まで気づかなかった課題が浮かび上がってくるかもしれません。
住宅のデザインの方針は本当に様々です。
開放感を重視した間取りの家、工夫に満ちた狭小住宅、趣味に特化した家…など。誰にでも使いやすいオープンな家づくり、というスタイルもその一つです。
住む人の多様性に寄り添う住宅は、住む人の行動に多様性を与えます。それはきっと、日々の暮らしの豊かさにつながることでしょう。