雨の多い日本では、雨樋はなくてはならない設備です。しかし、普段はあまり注目することがないものであるため、材質や形状にさまざまな種類があることを知らない人も多いでしょう。
雨樋の種類は、雨樋修理の費用にも関わることなので、自分の家の雨樋の形状や材質を知っておくことは重要です。
また、雨樋の形状や材質ごとの特徴を知っておけば、雨樋を交換する際に自身の家にぴったりの雨樋を選ぶことができます。
この記事では、雨樋の形状や材質の種類を解説します。信頼性の高い主要メーカーや価格帯の目安、雨樋の部品などについても説明しているので、雨樋の修理・交換の参考にご活用ください。
雨樋の形状の種類
雨樋の形状は、以下の4種類に分けられます。
- 半円型
- 角型
- リバーシブル型
- 特殊型
それぞれの形状の特徴は以下の通りです。
半円型
半円型は、最も一般的なタイプの形状の1つです。昔から長く使われてきたタイプで、古い住宅の大半に半円型の雨樋が使われています。
和風の瓦屋根は、半円型とデザインの相性が良いとされています。
単純な形状で、他のタイプよりも安価です。
角型
直方体を長く延長したような形状の雨樋です。
以下の特徴があることから、直近10~20年の間に建った住宅の大半で角型の雨樋が使われています
- 半円型よりも流水量が多いため、雨量が多いとき雨水があふれる恐れが半円型よりも低い
- 直線的な形状が、洋風のデザインや現代的なデザインの住宅にもマッチする
ゲリラ豪雨のように短時間で降雨量が増えても雨水があふれないように、片側がせり上がっているタイプもあります。
リバーシブル型
家屋側は角型、前面は半円型の形状をした雨樋です。どちら側を前面にするかによってデザインの使い分けができます。
和風の瓦屋根の住宅など、デザイン面から半円型の雨樋を採用したいけれど流水量も確保したい場合に使用します。
特殊型
雪が雨樋に入り込まないようにカバーがついている雨樋で、雪が多い地域で採用されています。積もった雪や雪かきの雪の重みで雨樋を破損させる可能性が少ないです。
複雑な形状をしているため、他の雨樋よりも費用は高額です。
雨樋の材質の種類
雨樋の主な材質の種類は以下の6種類です。
- 塩化ビニール
- 塩化ビニール以外の合成樹脂
- ガルバリウム鋼板※
- ステンレス
- アルミニウム
- 銅
※ガルバリウム鋼板:スチールの薄板にアルミニウムと亜鉛の合金でメッキをしたもの。
それぞれの特徴は以下の通りです。
塩化ビニール
出典::SEKISUI エスロンタイムズ エスロン雨とい / 住宅用雨といのコンセプト・特長
軽量で施工しやすく安価なため、最もポピュラーな雨樋の素材です。
ただし、耐久性はあまり高くありません。雨や太陽光などで変色しやすく、劣化による破損が早いデメリットがあります。
塩化ビニール以外の合成樹脂
見た目は塩化ビニールと変わりませんが、より耐久性に優れています。特殊加工によって紫外線劣化防止機能を持たせたものもあります。
価格は塩化ビニールよりもやや高価です。
ガルバリウム鋼板
鋼板をアルミ亜鉛めっきなどでコーティングしたものです。さびにくく耐久性が高い素材で、屋根材としての普及が進むにつれて雨樋にも採用されることが増えてきました。
加工しやすく価格も比較的安価であるため、金属素材の雨樋の中では一番多く使用されています。
ステンレス
強度と耐久性に優れ、さびにくい点から雨樋に適している素材です。部材同士を内側でつなげることができるので継ぎ目が目立たずすっきりした印象に仕上げることができます。
費用はガルバリウム鋼板よりも高くなりますが、アルミニウムよりは安価です。
アルミニウム
金属製であるにもかかわらず軽量で、サビに強い素材です。気温の上下による体積変化が少ないため、たわみや反りなどの不具合も生じにくいです。
ただし、価格が高額であるため、一般住宅で使用されることはあまり多くなく、デザインも限られています。
銅
新設時の赤銅色が経時的に青銅色に変化する様子が美しい素材です。寺社仏閣や純和風住宅などで使用されます。
雨樋の素材としてはかなり高額ですが、耐久性が高いため長期間使い続けることができます。また、従来の銅製雨樋は酸性雨に弱い欠点がありましたが、近年では内側をステンレス銅にして耐久性を高めたハイブリッドタイプも登場しています。
雨樋のメーカー
新しい雨樋を購入するなら、よく知られた信頼あるメーカーの製品にしたいですよね。
以下は、主要な雨樋メーカー5社です。
- 1. 積水化学
- 2. パナソニック
- 3. タキロンシーアイ
- 4. タニタハウジングウェア
- 5. デンカアステック
それぞれの特徴や製品を簡単にご紹介します。
積水化学
塩化ビニール製の雨樋を60年以上製造し続けてきた大手メーカーです。
まだトタン製や銅板製の雨樋がほとんどだった時代からの老舗であり、日本に塩化ビニール製の雨樋を普及させたリーディングカンパニーといえます。
積水化学の「エスロン雨とい」は、60年以上の歴史を誇る高機能プラスチックの加工技術を活かした機能性・デザイン性の高い雨樋となっています。
出典:SEKISUI エスロンタイムズ建材 エスロン雨とい / 住宅用雨といのコンセプト・特長
パナソニック
電化製品の製造でとくに有名な大手メーカーです。電化製品だけでなく、住宅設備や建材の製造もしています。
プラスチックや金属、シリコンなど幅広い種類の素材を扱っていることを活かし、プラスチックの耐久性とスチールの強度を合わせ持った雨樋製品「アイアン」を売り出しています。
タキロンシーアイ
1955年から塩化ビニール製品を取り扱ってきた「タキロン株式会社」と、1963年から建築用資材や工業用品を取り扱ってきた「シーアイ化成株式会社」が2017年に合併し、「タキロンシーアイ株式会社」となりました。
流体力学(水や空気など、流れる物体の動きの性質の研究)の活用により排水能力を高めた雨樋製品「ジェットラインJ135・J170」や、デザイン性を重視した雨樋製品「シェイプリーラインTRU」を売り出しています。
出典:タキロンシーアイ ジェットラインJ135/T15・J170/T15 製品仕様
参考:タキロンシーアイ
タニタハウジングウェア
1970年から、金属製雨樋を製造してきたメーカーです。
ガルバリウム鋼板製やステンレス製、アルミニウム製など、各種金属製の雨樋を取り扱っています。
「普遍的であること、長く愛されること」をコンセプトにしたガルバリウム鋼板製雨樋「スタンダード半丸105」や、ステンレス製で特注カラー対応の「レクステン R6号」などを販売しています。
参考:タニタハウジングウェア
デンカアステック
住宅設備を取り扱ってきたデンカ株式会社の住設資材部と、金属製雨樋を製造してきた中川テクノ株式会社が2021年に合併し、「デンカアステック株式会社」となりました。
プラスチック製(塩化ビニール含む)、ステンレス製、ガルバリウム製、アルミ製の雨樋を製造しています。
美しさと耐久性を両立した二重構造の雨樋「ダンラインエクセルDL75F・DL75・DL55F・DL55」などが有名です。
出典:
デンカアステック株式会社 ダンラインエクセルDL75F・DL75・DL55F・DL55
参考:デンカアステック株式会社
雨樋の価格帯
あくまで参考ですが、半円型・角型それぞれの、材質ごとの価格帯の目安をお伝えします。
半円型
- 塩化ビニール製 :1,000〜1,600円/軒樋1本
- 他の合成樹脂製 :1,600〜2,600円/軒樋1本
- ガルバリウム製 :5,000〜6,000円/軒樋1本
- 銅製 :10,000〜11,000円/軒樋1本
角型
- 塩化ビニール製 :1,700〜2,700円/軒樋1本
- 他の合成樹脂製 :2,700〜3,700円/軒樋1本
- ガルバリウム製 :6,000〜7,000円/軒樋1本
- 銅製 :11,000〜12,000円/軒樋1本
- アルミニウム製 :23,000円/軒樋1本
- ステンレス製 :19,000円/軒樋1本
※軒樋とは、雨樋の、屋根の端に沿って水平に設置されている部分です。
※1本は3.64メートルです。
また、価格には設置費用や業者利益等は含まれていません。
その他の特殊な形の雨どいは、製品によって価格に大きな差があります。
ケース別におすすめする、雨樋の種類
雨樋の形状や素材は種類が多く、どれを選べばよいのか迷いますよね。
この章では、ケース別に雨樋のおすすめを紹介します。
費用を抑えたい場合
費用を抑えることを最優先で検討している場合は、半円型で塩化ビニール製の雨樋がおすすめです。
形状も素材も最も安価なので、リーズナブルに施工することが可能です。
長持ちさせたい場合
変形や破損などのトラブルが少なく長持ちする雨樋にしたい場合は、金属製の雨樋が適しています。
なかでも、比較的種類が多く費用と性能のバランスが良いガルバリウム鋼板製の雨樋がおすすめです。
十分な予算がある場合は、選べるデザインは限られますが、ステンレス製やアルミニウム製の雨樋を検討するのもよいでしょう。
雨が多い地域の場合
雨が多い地域では、雨水の排水能力が高い角型の雨樋がおすすめです。
また、同じ角型の雨樋でも、大きいサイズのほうが台風や豪雨でもあふれにくくなります。
ちなみに、2022年にとくに雨量が多かった地域は、沖縄県、静岡県、宮崎県などです。
豪雪地帯の場合
雪が雨樋に入り込まない特殊型の雨樋を選びましょう。特殊型以外の雨樋を選ぶと、雪下ろしなどで大量の雪が雨樋にかかると雨樋が壊れたり外れたりしてしまいます。
スタイリッシュなデザインにしたい場合
デザイン性の高い家屋には、雨樋もこだわって選びたいものですね。
角型の雨樋は、その直線的な形状が軒になじんで目立ちにくいのでおすすめです。
角型の中でも、角度をつけて軒先の延長のように見せられるタイプなどは、雨樋の存在を感じさせず住宅のスタイルを損ないません。
住宅のデザインにこだわる場合、屋根や外壁などになじむ色を選ぶことも重要です。塩化ビニールや合成樹脂、ガルバリウム鋼板など、流通量が多くデザインも豊富な素材を選べば、家のデザインにマッチするカラーを選びやすいでしょう。
和風住宅のデザインになじませたい場合
住む人の好みにもよりますが、和風住宅には、半円型の雨樋の曲線がマッチするといわれています。
リバーシブル型の雨樋であれば、雨水の流水量を確保しつつ、半円型のデザインを活かした雨樋の設置可能です。
竪樋※に鎖樋※を取り入れると、さらに和の印象が強まるでしょう。
※竪樋:軒から排水管までをつなぐ、地面に対して垂直に伸びている樋
※鎖樋:竪樋の一種で、カップ状の部材を鎖で縦に連ねた樋
寺社仏閣で見られるような銅の雨樋にする方法もあります。純銅製の雨樋は高価で、一般住宅用の商品はほとんど流通していませんが、近年ではステンレスに銅を熱融着させた金属雨樋が販売されています。たとえば、タニタハウジングの雨樋製品「SusCu」などです。
純銅性より安価で、見た目は高級感のある銅製雨樋と同様です。さらに、内側に耐久性の高いステンレスを採用することで、酸性雨に弱いとされる銅の欠点もカバーできる製品です。
雨樋の役割と部品
雨樋に不具合が生じていても、すぐに困ることがないからといって、修理を後回しにしていないでしょうか。
雨樋は、住まいを守る重要な役割を担っています。もしあなたの家の雨樋が詰まったり壊れたりしているなら、早めの修理や交換をおすすめします。
この章では、雨樋の役割を紹介します。雨樋各部ごとの名称と役割も解説するので、修理を依頼する際に役立ててください。
雨樋の役割
雨樋の役割は、屋根に降ってきた雨水を、排水設備に排水することです。
屋根面積が100平方メートルの屋根にやや強い雨(1時間に10~20mlの降雨量)が降った場合、屋根に降る雨水の量は1時間で10~20リットル、3時間で30~60リットルにもなります。
雨樋が機能しなければ、雨水は排水管に排出されず樋からあふれたり漏れたりします。その結果、次のように住まいにさまざまなトラブルが生じる恐れが高いです。
- あふれた雨水で、家の周囲がじめじめと湿った不快な環境になる
- 湿気がカビの発生や家屋の腐食の原因となる。
- あふれた雨水が軒先や外壁にかかると、ヒビやすき間から雨水が浸入して雨漏りの原因となることがある
- 家の周囲で湿気の高い状態が続くと、湿気を好むシロアリが繁殖するおそれがある
建物を良い状態で長持ちさせるのに、雨樋は役立っているのです。
雨樋の部品
ここでは「雨樋」を構成する各部の名称と役割について解説します。
軒樋
屋根の軒先に、地面に対して水平に設置された樋です。屋根から落ちてくる雨水を受け止め、竪樋まで流します。
曲がり
まっすぐな軒樋同士を、屋根の角の部分でつなげるための部材です。設置の際には屋根の角度に応じた角度の曲がりを選びます。
止まり
軒樋の端に設置して、雨水をせき止めるための部材です。
集水器
軒樋から竪樋につなぐための部材です。軒樋を流れる雨水は集水器に集まり、呼び樋を中継して竪樋に流れます。
呼び樋
軒樋と竪樋をつなぐ、横向きに設置された短い樋です。集水器から分岐し、軒裏を通って竪樋につながります。
便宜的に「呼び樋」と呼ばれますが、部品自体は竪樋を必要な長さにカットしたものです。
竪樋
地面に対して垂直に伸びている部分で、縦樋と書くこともあります。軒樋から流れてきた雨水を下水まで流します。
継ぎ手
雨樋の部品同士をつなげるための部材です。軒樋用や縦樋用などがあります。
エルボ
角度がある部分で雨樋を連結するための部材です。集水器と呼び樋をつなぐ場合や呼び樋と竪樋をつなぐ場合に使用します。
寄せマス
1本の竪樋に2本の呼び樋をつなぐために使用する部材です。
雨樋はメンテナンスが必要!
雨樋が十分に機能し、住環境が良好に維持されるためには、定期的なメンテナンスの必要があります。
この章では、雨樋のメンテナンスが必要な理由や、メンテナンスを行う頻度や時期について解説します。
雨樋のメンテナンスが必要な理由
雨樋は、以下のように不具合が生じる可能性があるので、メンテナンスが必要です。
- 紫外線や風雨に長期間さらされることによる経年劣化
- 強風による飛来物などによる破損
- 落ち葉やホコリ、ゴミなどが雨樋の中に溜まったことによる詰まり
「まだ新しい雨樋だから大丈夫」と油断せず、雨樋が正常に機能するようにメンテナンスを行いましょう。
雨樋のメンテナンス、自分でやるか業者で依頼するか
雨樋のメンテナンスは、以下の理由からDIYよりも業者に依頼することをおすすめします。
- 高い位置にある雨樋の点検や修理は危険を伴う
- 高圧洗浄機などの清掃器具がない場合、竪樋の清掃や詰まり解消が困難
- 雨樋の不具合が見つかっても、部材や修理器具がないと雨樋の交換や修理ができない
- 雨樋の形状や部品はさまざまなので、一般の人が修理や交換に使用する部品を準備するのは難しい
- 不慣れな人が点検や清掃を行うことで誤って雨樋を破損させる可能性がある
最も注意してほしいのが、高所での作業は危険である点です。建設業界には『1mは一命取る』という言葉があるほど、プロであっても高所で行う作業は大けがを負う恐れがあります。
家の補修に不慣れな人は無理をせず、雨樋のメンテナンスは業者に依頼するのが安心です。
雨樋のメンテナンスを行う頻度
雨樋のメンテナンスは、大きく分けて清掃と点検に分けられます。
雨樋の清掃を行う頻度とタイミング
雨樋の清掃は、年に2回程度行うのが理想的です。費用や時間の点で難しい場合は、1年に1回、2年に1回などの頻度で清掃するとよいでしょう。
ただし、以下のように雨樋が詰まりやすい環境の場合は、できるだけ1年に2回以上清掃するのがおすすめです。
- 住宅のすぐそばに樹木があり、落ち葉が多い
- 周辺に、畑やグラウンドなど、土埃の原因になるものが多い
環境に応じてこまめに掃除することで、雨樋の詰まりを予防できます。
清掃のタイミングとしては、花粉やホコリで汚れる春、落ち葉が溜まる秋が良いでしょう。
雨樋の点検を行う頻度とタイミング
年に1回、点検を行うのが理想的です。
雨樋の不具合は、落ち葉や砂などによる詰まりだけではありません。
屋外に設置され日光や風雨にさらされ続ける雨樋は、経年劣化や大雨などでズレや破損が生じる場合があります。
また、台風や豪雨では飛来物や強風で雨樋が破損したり外れたりしがちです。台風や豪雨の後は雨樋の外観や降雨時の雨水の流れ方を確認し、不具合が見つかったら早めに修理を行いましょう。
まとめ
雨樋の形状や材質はさまざまです。雨樋の交換を検討する場合は、雨樋の形状や材質の種類を知っておくと、最適な雨樋を選びやすくなります。
例えば、「何を重視するのか」によって、次のような選択肢があります。
- 工事コストを抑えたいなら塩化ビニール製の半円型
- ゲリラ豪雨にも対応できる排水能力を求めるなら角型
- 耐久性を重視するならガルバリウムやステンレスなどの金属製を選ぶ
しかし、どんなに良い雨樋を選んで設置しても、メンテナンスせずに放置していると雨樋としての機能を果たせません。
雨樋には、雨水を速やかに排出することで住宅を良い状態に保つ役割があります。雨樋に不具合がある場合は早めに対処し、定期的なメンテナンスを行いましょう。
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