住宅のメンテナンスは、費用や手間がかかるものです。
住み手としては、費用も手間もできるだけ少なく済ませたいですね。
メンテナンスフリーの屋根材というと、瓦屋根を思い浮かべる人も少なくないでしょう。
「瓦」という素材は、屋根材としての歴史が古く、奈良県の元興寺では、飛鳥時代の瓦が今なお使われており、メンテナンスフリーの実績があります。
しかし、漆喰(しっくい)やモルタルなど、いろいろな部材と組み合わせてつくられる「瓦屋根」については、定期的なメンテナンスが必要です。
今回は、瓦屋根に使われる瓦の種類と耐用年数、メンテナンスの内容、費用の目安などについてお伝えします。
瓦屋根のメンテナンスについてお困りの方は確認して、参考にしてください。
目次
瓦の種類と耐用年数
瓦屋根に使われる瓦の種類と耐用年数についてお伝えします。
粘土瓦
※引用:株式会社鶴弥
粘土を瓦の形状に成型し、乾燥させた後で1,000~1,250℃の高温で焼き固めて作られます。
趣や産地から、日本瓦や洋瓦とも呼ばれます。
制作の過程で、釉薬(ゆうやく・うわぐすり)をかけるか、かけないかによって釉薬瓦と無釉瓦(むゆうがわら)に分けられます。
それぞれの特徴を確認しましょう。
釉薬瓦
粘土瓦を焼き上げる前に、釉薬をかけて作られる瓦で、次の特徴があります。
- 耐用年数50~100年
- 屋根下地や副資材以外のメンテナンスが基本的には不要
- 色の種類が豊富
- 変色がほとんどない
- 「陶器瓦」とも呼ばれる
無釉瓦
いぶし瓦を代表とした釉薬を使わずに作られる瓦で、次の特徴があります。
- 耐用年数30~50年
- 和風の趣がある
- 経年による味のある変色が楽しめる
- 「いぶし瓦」のほかに、「素焼き瓦」、「練込(ねりこみ)瓦」、「窯変(ようへん)瓦」がある
セメント瓦
※引用:井桁スレート株式会社
セメント・砂・水を混ぜ、成型し、塗装して作られます。
次の特徴があります。
- 耐用年数30~40年
- 形状、色のバリエーションが豊富
- 比較的安価
- 温度差に強い
- 耐火性に優れる
- 防水性は塗装頼りのため、塗装のメンテナンスが必要
乾式コンクリート瓦(モニエル瓦)
コンクリートが主成分の瓦です。
セメント瓦と似ていますが、砂利が含まれているため、小口がゴツゴツしています。
次の特徴があります。
- 耐用年数40~50年
- 色のバリエーションが豊富
- 洋風の外観に合う見た目
- 専用の下塗り剤を使った塗装メンテナンスで防水する必要がある
海外メーカーと日本企業共同開発した商品ですが、日本企業が解散したため、10年ほど前に生産が終了しています。
瓦のメンテナンスが必要な劣化状況
日差しや雨、風にさらされている瓦屋根は、日々劣化していきます。
瓦屋根において、メンテナンスが必要になる状況を紹介します。
漆喰の劣化
瓦屋根では、棟瓦(屋根の頂上にある瓦)の固定に漆喰が使われています。
経年劣化によって、漆喰はポロポロと壊れたり、割れたりします。
漆喰が劣化すれば、棟のズレ・ゆがみ・浸水などが起こります。
ヒビ割れ、欠け
台風や地震、日常的な振動など、衝撃によって瓦がひび割れたり、欠けたりすることがあります。
放っておくと、危険な落下事故に繋がりますので、なるべく早く対応しましょう。
ズレや欠落
台風や、地震、日常的な振動など、衝撃によって瓦がズレたり、欠落したりすることがあります。
1枚落下するとバランスが崩れ、次々に落下する可能性も高まります。
瓦は重く、落下の衝撃で割れると飛び散ることもあり、大変危険ですので、必ず修理しましょう。
色あせ
セメント瓦・乾式コンクリート瓦は、経年劣化による色あせが起こります。
セメント瓦も、乾式コンクリート瓦も、着色された層(塗装膜)によって防水性を保っています。そのため、色あせが見られる場合は塗装を行い、防水性を保ちましょう。
カビやコケ
セメント瓦や乾式コンクリート瓦は、適切なメンテナンス時期が過ぎると、保護層が破壊され、水が浸みこむようになります。
水を含むようになると、カビやコケが繁殖することがあります。
瓦の劣化を放っておくとどうなる?
瓦屋根の劣化を放っておくと、日に日に進行し、以下のようなトラブルが起きる恐れがあります。
- 瓦が落下する
- 雨漏りする
- 下地の木材(野地板、垂木)が腐る
- 屋根がカビやアレルギー物質の温床になる
- 浸水によって家の構造材が傷む(腐る)
- 浸水によって屋内配線が濡れ、漏電する
- 浸水によって屋根材が傷み、下地材や構造材が腐って屋根に穴があく
- 浸水によって屋根材が傷み、下地材や構造材の浸食が進み、屋根が崩落する
瓦の劣化を放置することは、家に住む家族や周囲の人を危険にさらす可能性があり、大変危険です。
劣化を確認したら放置せず、必ず対処しましょう。
瓦のメンテナンス方法・時期・費用の目安
瓦のメンテナンス方法や、時期と費用の目安をお伝えします。
ここでは35~40坪程度の、一般的な広さの木造2階建てという一戸建てを想定し、費用を算出しています。ただし、瓦によってはアスベストを含有している場合があり、その場合別途アスベスト処理費が必要になるケースがあります。
瓦のメンテナンスには足場の架設が必要になりますので、外壁リフォームと時期を合わせてできるといいですね。
点検
定期的な点検を行うことで、瓦のズレや割れといった不具合が起こる前に不調箇所を発見することができます。
トラブルが起きる前など早い段階で修理することで、補修費用が安く抑えられるのです。
また、屋根を長持ちさせることにもつながり、トータル的なメンテナンス費用が抑えられることもあります。
- 費用目安:無料~10万円程度
- 点検時期目安:5年に1度、築30年以上の場合毎年
差し替え
ひび割れなど、傷んでいる瓦を部分的に新しいものと差し替えるメンテナンスです。
1ヵ所から引き受けてくれる業者と、ある程度まとまった数からのみ引き受ける業者がありますので、事前に確認してから依頼しましょう。
- 費用目安:5,000円~5万円
- 差し替え時期目安:自然災害の後や、ひび割れなどが目視で確認できる時
ズレ直し
ズレた瓦を元の位置に直すメンテナンスです。
差し替えと同様に、1ヵ所から引き受けてくれる業者と、ある程度まとまった数からのみ引き受ける業者がありますので、事前に確認してから依頼しましょう。
- 費用目安:5,000円~5万円
- 瓦のズレ直し時期目安:自然災害の後や、ズレなどが目視で確認できる時
漆喰の詰め直し
屋根の頂上にある棟部分で接着材として使われている、漆喰のメンテナンスです。
詰め直しで済む場合と、棟瓦から積みなおす場合があります。
- 費用目安:4~15万円
- 漆喰詰め直し時期目安:10~15年
棟瓦の積み直し
漆喰の劣化や、台風や地震などのダメージなどで、ゆがみやズレが見られる場合に行うメンテナンスです。
棟は、地震や強風のダメージをとくに受けやすい部分ですから、災害の後は点検を受けると安心です。
- 費用目安:10~20万円
- 棟瓦積み直し時期目安:10~15年
板金補修
瓦屋根でも、谷(屋根面と屋根面がぶつかり、水がたまりやすい部分)や、屋根と外壁の継ぎ目部分には板金が使われています。
板金はサビに強いステンレスやガルバリウム鋼板で作られているものです。しかし、劣化や、サビたものが触れていることでもらいサビが発生して穴があいたり、めくれたりすることがありますので、瓦より早く交換や補修の時期を迎えます。
- 費用目安:5~10万円
- 板金補修時期目安:10~15年
防水紙(防水シート)補修
瓦材は防水性に優れ、ほとんどの雨水の浸入を防いでいますが、瓦材の下には防水紙(防水シート)が施されています。
防水紙は、経年劣化により穴があいたり、腐ったりすることがありますので、瓦を全て外して、張り直しを行う必要があります。
- 費用目安:60~100万円
- 防水紙補修時期目安:20~30年
葺き替え
瓦の材質によりますが、瓦自体の劣化が進むと、葺き替えが必要になります。
瓦屋根から瓦屋根に葺き替えるか、他の屋根材に葺き替えるか、築年数や予算に応じて検討しましょう。
- 費用目安:90~200万円
- 葺き替え時期目安:瓦材の耐久年数による
塗装工事
セメント瓦やコンクリート瓦の場合、防水性や美観を保つために必要になるメンテナンスです。
遮熱塗料や、汚れを落ちやすくする塗料など、塗料の機能性によって価格が変動します(粘土瓦の場合は必要ありません)。
- 費用目安:50~100万円
- 塗装時期目安:10~15年
瓦以外の屋根材別のメンテナンス時期と費用
瓦以外の屋根材のメンテナンス時期と、費用の目安を確認しましょう。
35~40坪程度の、一般的な広さの木造2階建てという一戸建てを想定し、費用を算出しています。ただし、スレートなど屋根材によってはアスベストを含有している場合があり、その場合別途アスベスト処理費が必要になるケースもあります。
ガルバリウム鋼板
メンテナンス | 時期 | 費用目安 |
塗装 | 15~20年 | 50~100万円 |
板金補修(谷、棟) | 10~15年 | 10~15万円 |
カバー工法 | 15~20年 | 50~120万円 |
葺き替え | 30~40年 | 75~140万円 |
スレート
メンテナンス | 時期 | 費用目安 |
塗装 | 7~10年 | 50~100万円 |
差し替え | 発見次第 | 5,000円~5万円 |
板金補修(谷、棟) | 10~15年 | 10~15万円 |
カバー工法 | 7~15年 | 50~100万円 |
葺き替え | 10~30年 | 60~120万円 |
アスファルトシングル
※引用:タイルマート
メンテナンス | 時期 | 費用目安 |
塗装 | 7~10年 | 50~100万円 |
めくれ、はがれ補修 | 発見次第 | 5,000円~5万円 |
カバー工法 | 7~15年 | 50~100万円 |
葺き替え | 10~30年 | 60~110万円 |
銅葺き
メンテナンス | 時期 | 費用目安 |
サビ補修(黒や茶色にさびた場合)、雨漏り補修 | 発見次第 | 3~10万円 |
葺き替え | 50~100年 | 130~250万円 |
瓦屋根のメリットとデメリット!心配なら葺き替えもあり
瓦屋根のメリット、デメリットを紹介します。
瓦屋根のメリット
- 耐火性、断熱性、遮音性、耐久性に優れる
- 高級感がある
- 破損しても1枚から交換できる
- ずれても部分的に補修できる
- 湿気が多くて四季がある日本の気候にあっている
(屋根裏にこもる湿気を逃がしやすい工法、遮熱・断熱・保温効果から、夏涼しく冬温かい) - 夏涼しく冬暖かい家を実現しやすい
瓦屋根のデメリット
- 比較的高価
- 重量があるため建物の負担になる
- 台風や地震でずれたり落下したりすることがある
- カバー工法のリフォームに対応できない
いろいろな面で優れる瓦屋根ですが、台風や地震の際に落下するなど、危険なデメリットもありますので、安全性を保つために、定期的なメンテナンスは必要不可欠です。
また、建物の耐震性を高めるために、重い瓦屋根を軽いガルバリウム鋼板やスレート材などに葺き替える場合もあります。
このような工事を行う場合、屋根材を変えるだけでは耐震性が向上しないこともあります。
耐震補強設計を行い、建物全体のバランスを計算した上で工事を行うことが大切です。
伝統的で美しい瓦屋根は、計画的にメンテナンスを行って、長持ちさせたいですね。
瓦のメンテナンスはDIYで可能か?
瓦のメンテナンスは、自分で行えば費用も抑えられますし、依頼する手間もなく手軽に感じられるかもしれません。しかし、落下の危険などがあり、専門職の方以外のメンテナンスはおすすめいたしません。それでも自分で行う場合の注意点について紹介します。
落下の危険性がある
瓦のメンテナンスは、高い屋根の上での作業になります。
屋根の上は、作業に慣れた職人でも、足場がなければ恐怖を感じるほど不安定な場所です。
そんななか、重い瓦を持ち上げたり移動させたりする作業には、大変な危険が伴います。
あやまって瓦を落下させる可能性だけでなく、作業を行う人も落下する恐れがあります。
瓦の状態が、より悪い状況になる可能性も
瓦は大変丈夫な部材ですが、劣化に気づかず踏んで衝撃を与えることで、割れたり、ズレが広がったりすることがあります。
1ヵ所の補修を直すために、他の箇所を破損させ被害が広がる恐れがあるため、十分注意しましょう。
できるだけ自分では補修せずに、業者に頼むのがいい
自分で補修を行う場合、危険であったり、被害を広げたりするだけではなく、現況の瓦に合った部材を探す手間や、不慣れな作業による疲労も伴います。
あらゆるリスクを考えると、できるだけ自分では行わずに、業者に依頼した方が無難で安全です。
信頼できる業者のポイント
屋根工事を扱う業者は多く、業者選びはとても迷うものです。
信頼できる業者を選ぶポイントをお伝えします。
劣化箇所の写真を元に説明してくれる
屋根の上は、どうしても自分では状況を確認しづらい部分です。
屋根の補修工事を行う場合、必ず事前に補修箇所を点検することになります。
危険なため家主には見られない部分なので、優良な業者は写真を使って屋根の状況や、劣化箇所を説明してくれます。
実際の状況が写真で見られると安心ですね。
工事終了後は、工事前の写真と比較して説明してもらうと、さらに安心できるでしょう。
見積もり書が詳細
悪徳業者に多い見積もり書の明細に、「一式工事」という表現があります。
屋根の広さや、必要な部材の数量は、物件によって異なりますので、見積もり書の作成は手間がかかるものです。
物件に応じた見積もり書をきちんと作成している業者の場合、数量欄には「〇平米」や「〇m」や「〇ヵ所」など、数値が並ぶはずです。
「一式」表記があまりにも目立つ場合、見積もり書の作成手間を省いている可能性があります。
また、見積書の明細は工事内容を表すものでもあります。
明細を細かく書かず「一式」と表現する場合は、工事の作業工程をごまかすためにしている場合も考えられます。
見積もり書を作成する際に、必ず作成する「数量根拠」の提出を求めてもいいでしょう。
業者の対応を比較検討するためには、必ず2~3社から見積もりを出してもらう「相見積もり」をとることが大切です。
瓦屋根の修理は火災保険が使える?
瓦屋根が、台風や竜巻・大雪などの自然災害で壊れたり、雨漏りしたりした場合は、住まいに掛けられている火災保険を使える可能性があります。
ただし、自然災害による屋根の破損から3年以上たった場合や、修理金額が保険適用金額を下回る場合などは適用にならない場合もあります。
自然災害で屋根が壊れた場合、住まいの安全と、修理費用の負担軽減のためにも、早めに工事を検討しましょう。
まとめ
瓦屋根や、ほかの屋根材のメンテナンスについて、費用や耐用年数などについてお伝えしました。
メンテナンスフリーといわれる屋根材でも、点検や副資材の交換などのメンテナンスが必要になります。
安心して住み続けるために、適切な時期にメンテナンスができるといいですね。
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