「劣化してきた家の屋根が心配」と、リフォームを検討しているご家庭も多いのではないでしょうか。
最も根本的なリフォームとなるのが、葺き替えです。屋根まわりを一新することができます。
しかし、なんとなく規模の大きな工事なのはイメージできるものの、実際に何をどれくらいの期間で行い、費用がいくらかかるのかは見当がつきづらいですよね。
このコラムでは、費用や工事の流れ、メリットやデメリットなど、屋根の葺き替えで気になるポイントを総合的に解説していきます。屋根の葺き替えに関する知識を得ることで、工事を不安なくスムーズに進めることができますし、悪徳業者などとのトラブルも避けられるようになります。
今後の屋根の葺き替えの参考にしてみてください。
目次
屋根の葺き替えの相場
屋根の葺き替えの相場は、平均的な30坪の一軒家で、100万~250万円ほどです。
相場に幅があるのは、業者によって設定価格が異なるのはもちろんですが、以下のような理由があります。
屋根材の違い
選ぶ屋根材によって価格は異なります。
たとえば、日本瓦は屋根材の中では単価が高く、葺き替えの費用も比例して高くなります。
一方、安価な屋根材は、メンテンスの頻度や耐用年数で高価な屋根材に比べると劣る傾向があります。
初期投資の金額だけでなく、最終的なランニングコストを想定することが大切です。
屋根の傾斜や構造
傾斜の急な屋根や、構造が複雑な屋根は工事の難易度があがり、必要な足場や工事の日数が増えることで、より費用がかかります。
アスベストの処分
アスベストが含まれている屋根材(コロニアルなど)を処分する場合は、通常の屋根材処分費用よりも処分費用が高額になります。
ソーラー(太陽光)パネルなど設置物がある場合
ソーラーパネルが設置されている屋根を葺き替えると、取り外しや再設置、ソーラーパネルを一時保管する費用が別途必要です。
ほとんどの場合、一度ソーラーパネルを取り外すとメーカー保証から外れることにも注意しましょう。
ソーラーパネルほど費用はかかりませんが、アンテナの脱着にも別途費用がかかります。
葺き替えとは?工事の流れや日数
葺き替えはどのような工事のことを指すのか、工事の流れや日数とともに解説します。
葺き替えとは?
葺き替え工事は、表面の屋根材だけではなく、その下のルーフィング(防水シート)、野地板と、下地を含めてすべて新しいものに取り替えます。それまで使用していた屋根材や下地とは別の種類に取り替えることも可能です。
依頼から完了までの流れ
業者に依頼してから、施工が完了するまでの大まかな流れは以下の通りです。
- 1.事前調査
- 2.見積もり書の作成
- 3.契約
- 4.工事
- 5.アフターフォロー
事前調査の有料・無料や、アフターフォローの手厚さなど、依頼する業者によって対応は異なります。
葺き替え工事の流れ
葺き替え工事は、以下の工程で行われます。
- 1.足場設置
- 2.既存屋根材の撤去
- 3.下地調整
- 4.野地板張り
- 5.ルーフィング張り
- 6.新しい屋根材の設置
- 7.足場撤去
必要な工期
葺き替え工事は1週間から2週間程度を要します。
屋根の形状や天候によって期間は前後しますので、余裕を持ったスケジュール調整をするとよいでしょう。
屋根の葺き替え時期
屋根をいつ葺き替えればいいかは、屋根の状態をチェックすることで判断できます。
より正確な調査のため屋根の上での作業が求められる際は、素人では危険が伴います。業者に依頼するのが安全です。
代表的なチェック項目は以下のとおりです。
見た目や体感でわかる
- 複数の雨漏りが起きている
- ヒビ、浮き、剥がれなど破損箇所が複数あり、補修工事では手に負えない
- カビや苔が生えている
- 色あせやサビが発生している
調査をするとわかる
- 下地が傷んでいる(カバー工法では解決できなくなる)
- 建ててから一度も屋根のメンテナンスをしていない、もしくは10年以上(スレート屋根や金属屋根の塗装のサイクルが約10年)メンテナンスをしていない
屋根材の耐用年数でわかる
耐用年数を過ぎた屋根材は、風雨から家屋を守る役割を十分に果たせません。葺き替えを検討する時期です。
主な屋根材の耐用年数
屋根 | 耐用年数 |
トタン屋根 | 約10~20年 |
スレート屋根 | 約20~30年 |
金属屋根(ガルバリウム鋼板) | 約30~40年 |
瓦屋根 | 約30(セメント瓦)~100年 |
主な屋根材の特徴については、こちらのコラムの「屋根材別の単価相場と耐用年数」の章をごらんください。
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瓦屋根のリフォーム費用はどのくらい?
自宅の屋根が古くなってきたらリフォームを検討する人は多いです…
2021.1.13イエコマ編集部
瓦屋根の家は検討の価値あり
瓦は屋根材の中でも耐久性が高く、日本家屋のシンボル的な存在として長く使われてきました。見た目の美しさだけでなく、耐火性の高さや優れた断熱性能など、日本の風土にも適した特徴を有しています。
一方で重量が重かったり、地震など自然災害時に落下する危険があったりするなど、欠点があることも事実。カバー工法によるリフォームもできないため、瓦屋根から別の屋根材にするためには葺き替えが必要です。
「瓦屋根にこだわりたい」という人のために、近年では瓦屋根の欠点を補った新しい瓦が登場しています。
たとえば、外装建材の大手メーカーであるケイミューの「ROOGA(ルーガ)」は、従来の瓦の半分ほどの重量を実現し、弱点であった耐震性をアップ、さらに雨風に強い構造になっています。
※参考:ケイミュー株式会社
葺き替えのメリット・デメリット
この章では、屋根の葺き替えのメリットとデメリットを挙げていきます。
結論を先に述べると、緊急性が高い状態(雨漏りをしているなど)や経年劣化が激しい状態であれば、デメリットより得られるメリットが大きくなると考えてよいでしょう。
葺き替えのメリット
- 雨漏りなど緊急性の高いトラブルの解消
- 選ぶ屋根材によっては屋根の軽量化につながり、災害対策になる
- ルーフィングや野地板も新しくできる
- 新しい技術や製品を取り入れることができる
- 家の印象を大きく変化
葺き替えのデメリット
- 屋根のリフォームの中では、最も高額な工事になる
- 工事期間が長く、天候にも左右されやすい
- 大がかり、かつ長い工事になるため、近隣住民へ迷惑をかけることがある
葺き替え以外のリフォームや部分修理
屋根のリフォームは、葺き替えだけが選択肢ではありません。
他の解決策があったのに、高額な葺き替えを選び、ローンを組んで……となるのはもったいないですよね。
葺き替え以外にも今の屋根を長く使うための方法があるので、屋根の状態に合わせた最適な方法を選びましょう。
カバー工法
既存の屋根材を剥がすこと無く、上から新しい屋根材でカバーすることでリフォームする方法。
葺き替えよりも安価で、廃材があまり出ないことから処分費用もかかりません。工事期間も葺き替えよりは短くなります。
一方、その特徴ゆえに全体の屋根の重量が増加します。下地の劣化が激しい場合や瓦屋根の家では、カバー工法によるリフォームは難しいです。
屋根塗装
屋根のリフォームの中で最も安価なのが、塗装です。風雨にさらされて塗膜(塗料が固まってできる塗料の膜)が劣化し、防水などの保護がなくなった屋根材に、新しい塗装を施すことで、屋根の寿命を伸ばすことができます。
定期的な塗装が必要な屋根材への塗装を怠ると、本来の耐用年数以下で交換時期がくる可能性があるので、塗装時期の見極めが大切です。
当然のことながら、雨漏りなど屋根材自体が傷んでいるケースでは、塗装だけでは解決できません。
部分修理
葺き替えやカバー工法ほど大規模な修理が必要でないなら、部分的に修理を行うことで屋根の性能を取り戻すことも可能です。
簡単な修理であれば、安全に十分に配慮したうえで、DIYで対処できるケースもあります。
部分修理の例
- 雨漏り修理
- 屋根材の部分的な交換・ひび割れ補修
- 瓦のズレ直し
- 瓦屋根の漆喰の塗り直し
屋根のメンテナンスをしないとどうなる?
屋根のメンテナンスが大切なのはわかっていても、構造上、状態の確認をするのは難しいもの。メンテナンスを怠ると、どのようなリスクを抱えることになるのでしょうか。
雨漏りが発生しやすくなる
屋根トラブルの代表といえば、雨漏り。定期的なメンテナンスや自然災害後のメンテナンスで、屋根材の破損や劣化、瓦のズレ・割れが見つかれば、大きな雨漏り被害になる前に対処可能です。
修理金額が高額になる
雨漏りの規模が小さければ、コーキング補修や傷んだ部分のみの交換、雨樋に原因があれば雨樋の修理など、規模の小さな工事で解決できることもあります。
雨漏りを放置、あるいは進行しているのに長く気づかない場合は、より高額な修理になる可能性があります。とくに、柱や壁面など家全体に影響を及ぼしている場合は、屋根の葺き替えなど全面リフォームや建て替えにまでいたるかもしれません。
屋根材を耐用年数以下しか使えない
前述のとおり、屋根材には耐用年数があり、張り替えの目安のひとつです。しかし、屋根の状態は海沿いといった立地条件など、家によってケースバイケースです。
メンテナンスをしながら必要なときに塗装や補修を行わないと、耐用年数より早く葺き替えが必要になる可能性があります。
カビや害虫が発生
雨漏りが発生し、家の中に雨水が浸入すると、カビやシロアリなどの害虫が発生しやすい環境になります。
屋根の修理だけでなく、壁の張り替えや害虫駆除もしなければなりません。
住人の健康被害
雨漏りを原因とするカビの発生や、害獣の侵入(糞害などのリスク)を許すことにより、喘息やアレルギー感染症など住人への健康被害も懸念されます。
屋根の葺き替えの注意点やポイント
屋根の葺き替えは大きな工事です。家の寿命に対して何度も行う工事ではありませんので、注意点やポイントを押さえながら、綿密に計画を立てましょう。
そもそも葺き替えは必要?
前述のとおり、屋根のリフォーム・補修は葺き替え以外にもさまざまな方法があります。もしかしたらまだ葺き替えのタイミングではないかもしれません。素人では判断することが難しいので、信頼できる業者に屋根の状態をチェックしてもらいましょう。
建築確認申請
大規模なリフォームの場合、建築確認申請が必要になります。
ただし、建築基準法上の「4号建築物」であれば、建築確認申請は不要です。
(4号建築物とは)
“2階建て以下、延べ面積500平方メートル以下、高さ13m以下、軒高9m以下の木造建築物
平屋建て、延べ面積200平方メートル以下の木造以外の建築物(非木造建築物)”
一般的な住宅のリフォームでは基本的に該当しません。
木造3階建て・鉄骨2階建て以上の家は、屋根や床、壁などを張り替える場合、建築確認申請が必要になりますので、事前に確認しておきましょう。
※参考:国土交通省 建築基準法
業者選定
屋根工事をする会社や屋根のメンテナンスをする会社選びは慎重に行いましょう。
業者の中には突然押しかけ、目視だけの簡単な調査だけで工事を進める悪徳業者も存在します。修理の技術が不十分だったり、費用が相場から離れていたりと、悪徳業者と契約してしまいトラブルになるケースは後を絶ちません。
相見積もりを活用
信頼できる業者を見つけたとしても、その1社だけで判断せず複数の会社と比較検討することが大切です。そのためには複数社に見積もりを出してもらう「相見積もり」を活用しましょう。
相見積もりなら、自分が選んだ業者が相場に近い提案をしているか、明瞭な内訳か、内容に不自然な点はないか、明細についてわかりやすい説明をしてくれるかなどを比較できます。
多すぎても比較は難しくなるので、3社程度に絞りましょう。
屋根材選び
「工事の内容も担当する業者も決まったからあとは任せるだけ」ではありません。屋根の葺き替えで最も大きな要素である屋根材の検討をし、希望を業者に伝えて調整できるようにしておくと、後々「別の屋根材にするべきだった」などと後悔する可能性を低くできます。
代表的な屋根材の種類別の長所・短所は次のとおりです。金属屋根は、性能と費用のバランスから人気のあるガルバリウム鋼板を例にします。
屋根材 | 長所 | 短所 |
瓦(粘土瓦) | 耐用年数が長い 調湿機能に優れる |
費用が高い 重量がある |
スレート | 加工しやすい 安価 |
ヒビ割れを起こしやすい 塗装のサイクルが短め |
ガルバリウム鋼板 | 軽量 費用対効果が高い |
遮音性が低い 沿岸部では塩害の可能性 |
アスファルトシングル | 割れ・サビに強い 色や形が豊富 |
日本では広く普及しておらず、業者の経験値が大幅に異なる |
スケジュール調整
屋根の葺き替え工事は天気の影響が大きいので、梅雨や台風、雪の時期は避けるのがベターです。
工事をするなら、雨の少ない時期(春や秋)がおすすめです。他の工事希望者の人も同じ時期を希望していることが予想されるので、スケジュールに選択肢のある早めのうちに業者と相談しておきましょう。
屋根の葺き替えに火災保険や補助金が使える?
屋根の葺き替えは、高額な修理費用になりがちです。火災保険や自治体からの補助金を利用して、少しでも負担を軽減できるように工夫しましょう。すべての葺き替え工事に適用されるわけではないので、注意も必要です。
火災保険
自然災害が原因で屋根が破損しリフォームが必要になった場合は、火災保険の適用対象になることがあります。すべてのケースに適用されるわけではないので、該当するかどうか保険会社に問い合わせて確認しましょう。
火災保険についてくわしくは、以下のコラムを参考にしてください。
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損してる?その雨漏りは火災保険の適応ケースかも!
屋根の雨漏りを修理する際に、実は火災保険が適用されるケースが…
2017.3.7イエコマ編集部
補助金
自治体によっては、家のリフォームに補助金が出ることがあります。
補助金の有無、対象の建築物や時期は自治体によって異なりますので、お住まいの地域のホームページなどで調べるか、窓口などで確認しましょう。
雑損控除申請
自然災害や盗難など、自分ではどうにもならないことが原因となり、生活に欠かせない資産に損害を受けた場合、翌年の所得税が減額されるのが雑損控除です。
たとえば、台風による屋根の損害は対象になる可能性がありますが、経年劣化による雨漏りは対象外となります。
確定申告時に申請するので、対象になるかどうか判断できない人や申請の手順がわからない人は、早めに自治体へ相談に行くことをおすすめします。
まとめ
屋根の葺き替えは大きな工事になるので、相場や時期、メリットやデメリットなど、基本的な情報を把握することが大切です。
葺き替え以外のリフォームの可能性や、火災保険の適用可否など、葺き替えを決断する前に調査・調整するべき項目もあるので慎重に検討しましょう。
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