スレート屋根にヒビが入っていたり割れていたりすると、雨漏りなどのトラブルが心配になりますよね。
スレート屋根とは、主成分がセメントで、繊維質を混ぜ込んで作られた昨今主流の屋根材「スレート」が使われた屋根です。
建物の屋根は、太陽の紫外線や雨や風、冬の寒さ、夏の暑さにさらされながらも、建物の中にいる私たちを守ってくれている大切な部分です。
屋根を良好な状態で長持ちさせるためには、適切な時期に適切なメンテナンスを行うことが大切になります。
この記事では、スレート屋根の補修について、方法や費用、劣化のサイン、業者に依頼する際のポイントなどについてお伝えします。
DIYや火災保険についても解説するので、屋根の補修やメンテナンスを行う際に、ぜひ参考にしてください。
目次
スレート屋根補修の方法と費用
スレート屋根の不具合の種類ごとの補修方法と、業者に依頼した場合の費用の目安を解説します。
スレートのヒビ
補修費用 | 1~3万円(1ヵ所あたり) |
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強風や台風で石やガラス片などの固いものが飛来しぶつかったことや、経年劣化、屋根の工事中に業者が屋根を踏んだなどのことでヒビが入ったスレート材の、補修や部分的な交換の工事です。
小さなヒビであれば、ヒビを埋めるだけのコーキング※で十分補修できるケースもあります。
この補修で対応できるのは、部分的なスレートの補修で間に合う場合です。
経年劣化により、屋根の広範囲でヒビ割れがみられる場合は、屋根全体の補修となります。
屋根全体の補修方法としては、塗装(30~70万円)、重ね葺き(80~150万円)、葺き替え(100~300万円)があります。
詳しくは後ほど解説します。
※コーキング:ヒビ割れや隙間などを埋めて、防水性や気密性を確保するために使う充てん剤
スレートの欠け・割れ
補修費用 | 1~2万円(1カ所あたり) |
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欠けたり割れたりしたスレートは、コーキングなどで欠けた部分を埋めたり、欠けたり割れたりした部分を新しいスレートに交換したりします。
スレートを部分的に取り外すようにはできていませんので、スレートの見えている部分を切り取り、上から新しいスレートをコーキング材で貼り付けるかたちです。
部分的に欠けた個所から雨漏りが起こる恐れがあるので、発見次第なるべく早く補修をしましょう。
棟板金の不具合
クギの打ち直し | 3~5万円 |
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板金の交換 | 6~10万円 |
屋根の一番高い部分である「棟」は、屋根同士のつなぎ目になっていて、通常、板金(薄い鋼板)で覆ってあります。
経年劣化や台風・地震などの衝撃により、この板金を留めているクギがゆるんで隙間ができたり、さびて穴があいたりすることがあります。
棟板金の不具合は、クギの緩みなど軽いものの場合は打ち直し、サビや反りなどの劣化が進んでいる場合は、全体的な交換が必要です。
スレート屋根の寿命と劣化サイン
自宅のスレート屋根について、「補修した方が良い状態なのかな?」「もう寿命なのかな?」と気になりますよね。
スレート屋根の寿命と、修理が必要な劣化のサインを解説します。
スレート屋根の寿命
一般的に、スレート屋根の寿命は20年前後といわれています。
寿命とは、屋根材の耐久性が失われ、防水や保護機能などがなくなってしまう年数の目安のことです。
スレートの種類や製造された時期、環境により耐用年数は異なりますが、20年を目安に、屋根材を新しいものに葺き替える(ふきかえる)か、カバー工法によりメンテナンスを行う必要が出てくることが多いです。
さらに、20年間全くメンテナンスをしなくていいというわけではありません。
スレートの劣化サインを見逃さず、適切にメンテナンスを行うことが大切です。
スレート屋根の劣化サイン
スレート屋根が経年劣化した際に見られるサインについて解説します。
次のようなサインが屋根のあちこちに多く見られる場合は、塗装や葺き替えなどの全体工事も視野に入ってきます。
色あせ・変色
目視でスレートの表面が白っぽく色あせたように見える場合や、ツヤが失われている場合は、スレート表面の劣化がはじまったサインです。
白っぽい粉のような色あせは、「チョーキング」と呼ばれ、塗膜(塗料が乾燥して形成する膜)の劣化が進行している状態です。
屋根の塗装工事を行い、屋根の防水性や美観を保つのが望ましいです。
塗膜が剥がれる
塗膜の劣化がさらに進むと、徐々に剥がれ(はがれ)はじめます。
ここまで劣化が進むと、スレートの防水性は完全に損なわれ、どんどん水分を含む状態になるので、なるべく早く塗装を行う必要があります。
この上から塗装を行う際は、ヤスリなどを使って古い塗膜を除去(ケレン)してから塗装を行います。
ケレンを行わないと、古い塗膜とともに新しい塗膜が剥がれる施工不良が起きてしまうことがあります。
コケや藻などの繁殖
スレート表面の塗膜が劣化し防水性が損なわれると、屋根の上に溜まったホコリや水分を栄養にし、コケや藻が発生しはじめます。
コケや藻があると、美観が損なわれるばかりか、屋根面がじめじめした状態になりやすく劣化をさらに進行させることになります。
屋根の塗装工事を行い、屋根の防水性を高めることが効果的です。
スレートが反る、割れる
塗膜が剥がれた状態で放置していると、スレート本体に雨水が浸みこむようになり、スレートがもろくなります。
さらに、雨水の吸収・乾燥が繰り返されるうちにスレートが変形し、反りや割れなどが見られるようになり、スレートの下の防水層の劣化も早まるため、雨漏りの危険性も高まります。
ここまで劣化が進行した場合、塗装ではメンテナンスしきれないため、重ね葺き(かさねぶき)や葺き替え(ふきかえ)などの大がかりなメンテナンスが必要です。
塗装・重ね葺き・葺き替えの費用
部分的な補修で間に合わない場合(屋根が全体的に劣化している場合や、不具合の範囲が広い場合)には、塗装・重ね葺き・葺き替えなど大がかりなメンテナンス工事も視野に入ってきます。
塗装・重ね葺き・葺き替えの概要や費用目安を知っておきましょう。
塗装
費用目安 | 30~70万円(木造2階建て30坪前後) |
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色あせや汚れ、ヒビ割れ、塗膜の剥がれなどの不具合を直し、屋根の防水性や美観を保つことができる方法です。
屋根の材質や、使われた塗料によって異なりますが、一般的に10~15年おきに必要になるメンテナンスです。
費用は、屋根の面積や、選ぶ塗料の平米単価により異なります。
作業内容は、足場の設置、屋根の汚れやスレートの表面の洗浄、古い塗膜のケレンなどの下地補修、塗装です。
重ね葺き(カバー工法)
費用目安 | 80~150万円(木造2階建て30坪前後) |
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古いスレート屋根の上に、ガルバリウム鋼板(耐久性に優れるアルミを主材料とした合金)や新しいスレート材を葺くメンテナンスです。
一般的に、スレートの劣化が進み塗装では補修できない場合や、劣化したスレート屋根にアスベストが含まれていて撤去費用がかかる場合に行われます。
古いスレート屋根にはアスベストが含まれていることがあり、撤去が必要な葺き替えを行うと、アスベストが飛散しないように、特別な対策を施す必要があります。
この場合、高額な対策費用が必要になるため、カバー工法がおすすめです。
葺き替え
費用目安 | 100~300万円(木造2階建て30坪前後) |
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既存の屋根をすべて撤去し、新しい屋根材で葺き替えるメンテナンスです。
葺き替えを行う際は、屋根の下地板の補修や防水シートの交換もするため、雨漏りしている場合は、根本的な解決ができる方法になります。
費用は、新しく葺く屋根材の価格によって異なります。また、古いスレート材を撤去・廃棄する費用も必要です。(1平方メートルあたり1,500~3,500円)
屋根の葺き替えに使われる主な材料の特徴は以下の通りです。
屋根材の種類 | 耐久年数 | メリット | デメリット |
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粘土瓦(日本瓦) | 50年以上 | ・耐用年数が長い ・断熱性が高い ・防音性が高い ・塗装の必要がない ・重厚感がある |
・高価 ・重い |
ガルバリウム鋼板 | 20~30年 | ・軽量で耐震性に優れる ・錆びにくい ・スタイリッシュなデザイン ・防水性が高い |
・薄く防音性が低い ・断熱性が低い ・傷がつきやすい |
スレート | 15~20年 | ・安価 ・デザインやカラーバリエーションが豊富 ・施工性が良い ・瓦より軽い |
・定期的に塗装する必要がある ・割れやすい ・古いスレートはアスベストを含有している恐れがある |
銅葺き | 60年以上 | ・耐用年数が長い ・美しい青銅に変化 ・塗装の必要がない ・重厚感がある ・軽量 |
・高価 ・工事が難しい |
スレートの種類
スレート屋根の住宅にお住まいで、「今のと同じ種類の屋根材がやっぱり安心。同じ種類の屋根材で葺き替えたい」と思っている方もいますよね。
ひとくちにスレートといってもいくつかの種類があるので注意が必要です。
スレートの種類を知り、葺き替えをする際にお役立てください。
天然スレート
「スレート」という言葉のもともとの意味は、天然の岩石である粘板岩の意味です。
平たく薄くそがれるように割れる粘板岩の特性を活かし、薄板状に割って成型したものが天然スレートです。
天然スレートは産出量が少なく高価であるため、一般住宅の屋根に使用されることはほぼありません。
化粧スレート(コロニアル・カラーベスト)
一般住宅に普及しているのが化粧スレートです。
化粧スレートは、セメントに繊維状の原料を混ぜて薄板状に成型・加圧し、表面を防水性のある塗料で塗装したものです。
大量生産できて比較的安価であることから、一般住宅用の屋根材として広く普及しています。
戸建て住宅で「スレート」といえば、ほとんどの場合化粧スレートと考えて間違いありません。
※天然スレートの屋根にこだわって建てた注文住宅のような場合は例外です。
化粧スレートの防水性は、表面の塗膜(塗装により乾燥して固まった塗料の膜)によるものです。
塗膜が劣化すると、スレートが雨水を吸収して劣化が進行するため、塗装によるメンテナンスが必要不可欠です。
厚型スレート(セメント瓦)
セメントを日本瓦のような形状に成型し、防水性のある塗料で塗装したものです。
化粧スレート同様、素材そのものの防水性は高くないため、定期的な塗装で防水性を維持する必要があります。
すでに製造停止になっているため、現在のご自宅の屋根がこの種類だとして、同じ種類の屋根に葺き替えることはできません。
波型スレート
波型スレートは、セメントに線維性の原料を加えて波板状に成型した屋根材です。
主に工場や倉庫の屋根に使用されるもので、一般住宅の屋根に使用されることはほとんどありません。
屋根補修の事例
スレート屋根の補修の事例を一部紹介します。
欠けの補修
ひびの補修
イエコマは、スレート屋根の補修を承っております。
屋根の状態やお客様のご希望に応じて、屋根の塗装・葺き替えも対応可能です。
お気軽にご相談ください。
屋根補修のDIYはできる?
「ちょっとした補修なら、自分でもできるのでは?」と考えている人もいるかもしれません。
結論からいえば、1階以下の高さの屋根の、ごく簡単な補修であれば可能です。
DIYで行う場合の注意点をお伝えします。
作業は1階以下の部分までにしよう
屋根の補修工事は、高所作業になるため、転落の危険が伴います。
作業は1階以下の下屋部分に留め、必ず転落防止の安全帯や命綱とヘルメットを装着した上で作業を行ってください。
脚立に上る場合は2人以上で作業を行い、1人は脚立を押さえ、転倒を防止しましょう。
補修は簡単なもので応急処置に留める
スレートの補修をDIYで行う場合は、ヒビ割れをコーキングで直す程度の簡単な部分補修に留めましょう。
また、DIYで補修した部分はあくまで応急処置とすることをおすすめします。
スレート屋根は、しっかり補修ができていないと、スレート下の防水層に雨水が浸みこみ、雨漏りを起こすこともあります。
DIYが選択肢に入ってくるのは、たとえば、「数年のうちに屋根の全体工事をする予定なので、それまでの一時しのぎとしてひび割れを埋めたい」などのケースです。
屋根工事を検討・依頼するときのポイント
屋根工事を検討したり、実際に業者に依頼したりするときのポイントを解説します。
雨漏りをしている場合は雨漏り調査業者へ!
雨漏りは、屋根からしていると思われることが多いですが、外壁や窓からしていることもあります。
すでに雨漏りしている場合は、場所を屋根と決めつけて屋根工事を検討するのではなく、雨漏り調査ができる業者に相談しましょう。
雨漏りの原因箇所を特定することで、雨漏りをしている箇所をピンポイントで補修できるため、雨漏りの修理費用を抑え、早く直すことができます。
イエコマでは、雨漏りの原因箇所を特定するための、散水調査・赤外線調査を初回体験価格55,000円で行っています。
うかがうのは「雨漏り診断士」の資格を持った雨漏りの専門家です。
明確な価格設定と、多くの実績で、安心してお任せいただけます。
業者選びは慎重に!
屋根のリフォームを行う会社の中には、悪徳会社も存在します。
悪徳会社には、次の特徴があります。
- 訪問営業で家の不具合を知らせてくる
- 見積もり金額が相場より高すぎる、安すぎる
- 高い金額を指摘すると、10万円単位の大きな値引きをする
- 「火災保険」や「補助金」の活用をすすめて営業してくる
- 「早く工事をしないと家が壊れる」などの不安をあおる言葉を使う
- 施主の都合を考えず、契約を急かす
依頼する際は、必ず見積もりをとり、相場費用を確認した上で、契約書を取り交わすことが大切です。
さらに、2~3社に相見積もりをとることもおすすめです。価格と対応の比較検討に役立ちます。
信頼できる業者を選びましょう。
過去の施工実績を確認しよう
業者選びの際は、ホームページやパンフレットから、過去の施工実績を確認しましょう。
小さな会社の場合、施工実績が閲覧できない場合もありますので、「過去の施工例を見せてほしい」とお願いしましょう。
屋根は、日ごろから雨や風、紫外線のダメージを受け、雨漏りや屋根材の傷みなどの被害が起きやすい部分です。
工事が始まってから、想定外の問題が見つかった際も、過去の施工経験が豊富な業者であれば、スムーズにトラブルを解決してくれる安心感があります。
屋根の補修は火災保険が使えるかも!
スレートのヒビや割れの原因が、自然災害(台風・強風・ひょう・大雪など)によるものの場合、火災保険を使って補修できる可能性があります。
ただし、屋根の損傷を受けてから3年以上経っている場合や、修理費用が保険適用金額を下回る場合など、自然災害が原因であっても火災保険を利用できない場合もあります。
免責事項や利用条件、手続き方法などを事前に確認してから、利用しましょう。
また、火災保険の利用について、業者とトラブルケースも増えているため、注意が必要です。
申請代行をうたう業者に依頼し、多額の申請代行手数料を請求されるケースや、経年劣化を火災保険で補修することを勧められ、うその理由で保険金を請求し、詐欺に問われるケースなどがあります。
火災保険の利用は、自然災害による被害にとどめ、保険金の請求は業者に全て任せず、自身で行うようにしましょう。
参考
一般社団法人日本損害保険協会SONPO 住宅の修理などに関するトラブルにご注意
注意!2006年8月以前のスレートはアスベストを含むかも?
2006年8月以前に製造されたスレートには、アスベストが使われている可能性があります。
アスベストとは、石綿肺や肺がん、悪性中皮腫の原因になると言われている有害物質です。2006年の「労働安全衛生法施行令」の改正により、2006年9月から使用が全面的に禁止になりました。
アスベストが屋根に使われているからといって、焦る必要はありません。
アスベストは、吸引して体内に取り込むと健康に問題が出る恐れがある物質です。アスベストを含む建材でできた家に住んでいるだけで、アスベストを吸引することは基本的にありません。
危険なのは、アスベストを含む建材を切断したり粉砕したりして、建材のアスベストが飛び散るときです。
このため、解体や葺き替えの際に飛散の恐れがないよう特別な措置を行うことや、カバー工法や塗装など、アスベストが飛散しないメンテナンス方法を選ぶことが大切です。
スレートにアスベストが含まれている場合、このようにアスベストの飛散を防ぐ特別な作業が要求されるため、撤去・廃棄に費用がかかることを覚えておきましょう。
まとめ
スレート屋根の補修方法には、部分補修・塗装・重ね葺き・葺き替えなどがあります。屋根の防水性能を保つためには、適切なタイミングで屋根の状態にあった補修や塗装などのメンテナンスを行うことが大切です。
DIYで補修する場合は、応急処置などごく簡単なものに留め、安全性を第一に考えて作業を行いましょう。
イエコマでは、戸建て住宅限定でスレート屋根の補修のほか、塗装や葺き替えを承っております。
お客様のご自宅に伺うのは、技術と知識を持った家の専門家です。
現地調査や見積もりは無料。明瞭な価格設定で、安心してお任せいただけます。
屋根について気になる点がありましたらお気軽にお問い合わせください!