屋根塗装の工事を検討しているとき、費用だけでなく、「どんな工程で、どのくらいの日数でできるのか」なども気になりますよね。
自宅の屋根でどんな作業が実施されるのか、知っておいた方が安心です。また、屋根塗装の工程や必要日数を知ることは、業者が出した見積もりのチェックや優良業者の見極めなどにも役立ちます。
当コラムでは、屋根塗装工事の基本的な工程と日数を解説します。
あわせて、屋根塗装工事以外のメンテナンス方法、工事前に知っておきたい注意点やポイント、業者の選び方などもお伝えします。
屋根塗装の基礎知識としてご確認ください。
目次
屋根塗装の基本的な工程と日数
屋根塗装工事は、9日前後で完了します。
※屋根の種類や広さ、劣化状況によります。
塗装が必要な種類の屋根材(屋根用建材)は、セメント瓦・モニエル瓦・スレート・トタンです。
・左がセメント瓦、右がモニエル瓦
※セメント瓦とモニエル瓦は、形状・色で見分けることはできません。
・左がスレート、右がトタン
屋根塗装工事の基本的な流れは以下です。
1. 足場架設、養生(1日目)
2. 洗浄(2日目)
3. クギ打ち(3日目)
4. 下地処理(4日目)
5. 下塗り(5日目)
6. 中塗り・上塗り(6~7日目)
7. 手直し・点検(8日目)
8. 片付け、足場解体(9日目)
足場架設、養生(1日目)
屋根塗装は、高所作業になりますので、安全のために足場を設置します。この足場設置の作業を「足場架設」や「足場架け」と呼びます。
塗装の飛散防止や道具や作業員の落下防止のために、足場を覆うように養生シートで保護します。
必要に応じて、塗装前に窓や室外機などもビニールシートで養生します。
足場架けと足場ばらしは、屋根塗装で一番騒音が出る工程です。
屋根の勾配(こうばい:傾きのこと)が急な場合(一般的に5寸※以上の場合)には、安全に作業を行うために、屋根足場も合わせて設置することがあります。
※角度約26.5度のこと。
洗浄(2日目)
高圧洗浄機やブラシを使って、屋根の表面の汚れやコケなどを洗い流します。
塗装の際に水分が塗料に混ざらないように、完全に乾くまで乾燥させます。
洗浄するための水は、外水栓などに接続して確保します。
クギ打ち(3日目)
屋根と屋根の突合せ部分の頂上の棟部分には、スレート屋根やトタン屋根の場合、「棟板金」が、瓦屋根の場合「棟瓦」が設置されています。
経年により、棟板金のクギが浮いている場合、打ち直しを行います。
また、トタン屋根や瓦屋根は、風で飛ばされないように等間隔で釘が打たれて固定されています。
クギを打ち直し、コーキングで固定することで、板金や瓦が飛ばされることや、雨漏りの予防になります。
下地処理(4日目)
塗料を塗る前に、屋根表面(下地)の状態を整える作業です。具体的な作業内容は、屋根の状態や種類によって変わってきます。作業内容の例は以下です。
- ひびや欠けをコーキング材で補修します。
コーキング材とは、建材のひび割れなどのすき間を埋めるのによく使われる材料で、施工時はボンドのように柔らかですが乾くと硬化してゴムのような質感になる性質があります。 - 欠損が大きくコーキングで補修ができない部分は、屋根材を差し替えます。
- 金属部分やトタン屋根やセメント瓦は、「ケレン」と呼ばれる作業で下地を整えます。
ケレンとは、電気工具やヤスリで屋根の表面を擦り、サビや古い塗膜(塗料が固まってできた膜)を落とす作業です。また、表面が滑らかな場合は、塗料がよく密着するように目粗し(表面をざらざらした状態にすること)も行います。
・コーキング材でひび割れを補修している様子
下塗り(5日目)
下塗りとは、下塗り剤を屋根の全体に散布する作業です。
下塗剤には、次のような役割があります。
- 下塗りの後の工程(中塗り・上塗り)で塗る塗料(仕上げ材)が屋根材にしっかり密着・定着するようにする
- 屋根材が仕上げ材を吸わないようにする。屋根が仕上げ材を吸うと、塗膜がきちんと形成されない
- 凹凸のある表面を平らにならす
下塗りは、仕上げ材が短期間ではがれるのを防ぎ、塗膜を長持ちさせるために大切な工程です。
下塗材にはいくつか種類があり、屋根材の種類や状態に応じて使い分けられます。
一般的に、金属屋根の場合は「プライマー」、スレート屋根の場合は「シーラー」、セメント瓦の場合は「フィラー」が用いられることが多いです。
中塗り・上塗り(6~7日目)
乾いた下塗り剤の上に、仕上げ用の塗料を重ね塗りします。この工程を「中塗り」と呼びます。
中塗りで塗った塗料が完全に乾燥したら、中塗りで使ったのと同じ塗料をさらに上から重ね塗りします。この工程が「上塗り」です。
細かい部分は刷毛で塗り、広い部分はローラーでムラや塗り残しができないように塗装します。
中塗り・上塗りをすることで、塗膜に厚みができ、塗膜の耐久性を向上させることができます。
また、上塗りには、塗りムラを確実になくし、塗料の色や艶を美しく仕上げる意味もあります。
手直し・点検(8日目)
上塗りが完全に乾燥したところで、塗り残しやムラがないか点検を行います。
必要に応じて手直しし、再度点検を行います。
また、周囲に塗料が飛び散っていないかも確認し、清掃します。
足場解体、片付け(9日目)
養生をはずし、足場を解体し、ゴミや道具を片付けたり清掃したりして、工事完了となります。
屋根の種類別の追加工程
屋根の種類によっては、上で紹介した基本的な工程以外の工程も必要になります。
スレート屋根の場合
スレート屋根の塗装は、縁切りの作業、もしくはタスペーサーが必須です。
縁切りとは、塗料でくっついたスレート材同士を切り離し、スレート材同士の間にすき間を確保することです。上塗りが終わった後に実施します。
タスペーサーとは、仕上げ用の塗料を塗る前にスレート材同士の間にはさんでおくことで、スレート材同士が塗料でくっつかないようにする道具です。
スレート材同士がくっついていると、雨水が屋根内部に溜まり、雨漏りを起こす恐れがあります。このため、スレート屋根の塗装は縁切りまたはタスペーサーが欠かせません。
縁切りよりもタスペーサーの方が効率が良いので、最近はタスペーサーを使う業者が大半です。
セメント瓦・モニエル瓦の場合
屋根の工法にもよりますが、棟部分に詰められている漆喰(しっくい)の詰め直しと、棟の取り直し(位置の補正)が必要になる場合があります。
屋根の美観維持や、耐久性を維持し、雨漏りを防止するために大切なメンテナンスです。
また、モニエル瓦は、表面のスラリー層(着色料の膜)を塗装の前に除去することが必要です。スラリー層が表面に残ったまま塗装をすると、塗布した塗料がスラリー層ごと短期間ではがれてくる恐れがあります。
スラリー層は高圧洗浄で落ちることが多いですが、高圧洗浄で落ちない場合は、スラリー層を電動工具などで削り落とす作業が必要です。
塗装以外の工事をした方が良い場合もある
屋根の状態や屋根材の種類によっては、塗装以外の工事をした方が良い場合もあります。
塗装以外の工事をした方が良いのは、次のような場合です。
- 屋根材の劣化が進んでおり、塗装をしても屋根の見た目を整えたり状態を回復させたりするのは難しい場合
- 深刻な雨漏りなど、部分的な修理では直せない不具合が屋根に発生している場合
- 製品自体に欠陥が見つかっており、塗装しても長持ちさせることができない屋根材の場合
塗装しても長持ちさせることができない屋根材の例としては、「パミール」があります。
パミールは、屋根材大手メーカー・ニチハが1996~2008年に製造していたスレートです。
スレートは本来20~30年ほどの耐用年数の屋根材ですが、パミールは、10年もしないうちに割れや欠けなどが生じてきます。
これは屋根材自体の問題なので、塗装で問題を解決することはできません。
塗装以外の屋根の工事としては、重ね葺き(カバー工法)と葺き替えがあります。
重ね葺き
重ね葺きとは、古い既存の屋根材の上に、新しい屋根材を被せる工事です。既存の屋根材と新しい屋根材との間には、屋根用の防水シート(ルーフィング)をはさみます。
上に被せる屋根材は、軽量で丈夫なことで知られる金属板「ガルバリウム」が一般的です。
重ね葺きのメリットは、次の2点です。
- 既存の屋根材を撤去する必要がないため、葺き替えよりも安価で、短い工期で済む
- 屋根が二重になるので、屋根の断熱性・遮音性・防水性が向上する
また、既存の屋根材がアスベスト(石綿)を含んでいる場合には、費用を抑える意味で重ね葺きは有効です。
アスベストは、吸引した人に肺がんなどを引き起こすことのある有害物質です。
アスベスト含有建材(アスベストを重量の0.1%を超えて含有するもの)の製造・使用が労働安全衛生法で禁止されたのは2006年9月なので、それよりも前に建てられた家にはアスベスト含有建材が使われていることがあります。
アスベスト含有建材の撤去はアスベスト対策(アスベスト吸引防止)が必要なので、費用が高額です。
重ね葺きは、既存の屋根材はそのままで施工するので、アスベスト対策の費用の心配はありません。
ただし、重ね葺きには、屋根が重くなり家の耐震性が下がるデメリットがあります。一般的に、屋根が軽い方が耐震性は上がるといわれています。
また、次のような場合は重ね葺きを施工できません。
- 既存の屋根が瓦屋根の場合
- 屋根自体の劣化や傷みが進んでいて、屋根の土台にあたる部分の修理や交換が必要な場合
葺き替え
葺き替えとは、古くなった既存の屋根材を全て剥がして、新しい屋根材を設置する工事です。
葺き替えの折には、必要に応じて、屋根の土台にあたる部分の修理や交換も行います。
葺き替えには、次のようなメリットがあります。
- 普段は屋根材に隠れて見えない土台部分までふくめて、屋根全体が万全な状態になる
- 新しく設置する屋根材を軽量なものにすれば、家の耐震性が上がる
デメリットは、塗装や重ね葺きに比べると費用がとても高額なことです。
屋根塗装は外壁塗装とまとめて施工が一般的
屋根塗装工事と外壁塗装工事は、まとめて施工されることが一般的です。
まとめて施工した場合のメリットは次の3つです。
工事に伴う負担や手間が一度で済む
まとめて施工することで、工事に伴う負担や手間を次のように減らすことができます。
- それぞれの工事で必要になる足場費用(1回約15~20万円)が一度で済むため、工事費が節約できる
- 業者とのやりとりや近隣挨拶などの手間が一度で済む
- 工事中につき「洗濯物を外に干せない」「窓を開けられない」など生活に制限がつく期間が一度で済む
仕上がりが美しくなる
まとめて施工した場合、屋根も外壁もきれいになるため、家全体としての仕上がりが美しくなります。
屋根や外壁のみを塗装すると、塗装していないそのほかの部分の色あせや汚れが目立つものです。せっかくお金を掛けて塗装工事を行っても、家全体は、ちぐはぐな印象になってしまう恐れがあります。
塗装サイクルをそろえることができる
塗装工事は、建物が存在する限り、塗料の耐用年数を迎えるたび行うものです。
別々に塗装を行うと、屋根と外壁のどちらかが耐用年数を迎えても、どちらかがきれいで、塗装をするにはもったいない状況になる可能性があります。
まとめて塗装することで、多くのメリットがありますので、塗装サイクルを揃えるために、最初の塗装から同じタイミングでメンテナンスを行うことがおすすめです。
屋根塗装の注意点やポイント
屋根塗装を失敗しないために、知っておきたい注意点やポイントをお伝えします。
見積書をチェックする
信頼できそうな業者だと思っても、見積額だけを見て即契約はしないようにしましょう。
見積書の内容は、しっかりチェックして、不明点があれば必ず質問しましょう。
必ずチェックしたいポイントは、次の5つです。
- 依頼した内容の工事が網羅されているか?
- 足場、屋根の面積は平米もしくは平方メートル表記になっているか?(平米と平方メートルは同じ単位です)
- 塗料の商品名は書かれているか?(メーカー名も書いてあるとなお良い)
- スレートの場合、縁切りまたはタスペーサーが内訳に掲載されているか?
- 価格が相場より不自然に高すぎたり安すぎたりしないか?
見積もり内容をチェックする自信がない場合、複数の業者から見積もりを出してもらう相見積もりをとって、内容を比較する方法もあります。
業者の対応や、工事価格の比較もできますので、2~3社の相見積もりはおすすめです。
現場調査はていねいに行ってもらう
屋根塗装の見積もりを依頼すると、業者による現場調査が行われます。
当然のことながら、屋根の状況をはじめ、施工する全ての場所を見てもらいましょう。
屋根に上がらないと確認できない部分など、実際に見るのが難しい部分は、写真を撮影してもらい、劣化の状況や見解、補修の内容まで業者としっかり話し合い、工事内容を理解しておくことが大切です。
塗料をチェック
外壁塗装では、業者が見積もりなどの段階で「この塗料はどうですか?」と塗料を提案してくるのが一般的です。
提案された塗料について、業者に質問したり、メーカーのホームページやカタログを見たりして、塗料の仕様(種類や塗り回数)を確認しましょう。
外壁塗装の塗料は、主原料や機能性によって種類が分かれており、種類によって耐用年数が異なります。
戸建て住宅の屋根塗装で、耐用年数などの面で安心なのは、シリコン系塗料・フッ素系塗料、遮熱塗料などです。
塗料の種類 | 耐用年数の目安 |
シリコン系塗料 | 10~15年 |
フッ素系塗料 | 15~20年 |
遮熱塗料 | 15~20年 |
※耐用年数はあくまで目安です。
ただし、紫外線を多く浴びる屋根は、塗料の劣化が2年ほど早いことがある点に注意が必要です。
塗料決めはメンテナンスサイクルを意識
塗料の耐用年数はメンテナンスサイクルに大きく影響するので、塗料決めはメンテナンスサイクルを意識することが重要です。
メンテナンスサイクルとは、メンテナンスの周期のことです。
屋根も外壁も、1回塗って終わりではなく、またメンテナンスが必要になります。たとえば、耐用年数が10年の塗料を塗ったのであれば、10年後に次のメンテナンスが必要です。
屋根のメンテナンスサイクルは、できるだけ外壁と合わせることをおすすめします。
外壁と屋根のメンテナンスサイクルを合わせ、同じタイミングで工事をすることには、次のようなメリットがあるからです。
- 業者の手配や近隣挨拶などの手間が1度で済む
- 1つの足場を屋根工事と外壁工事に併用できるので、足場代が浮く
屋根と外壁でメンテナンスのサイクルを合わせるには、外壁に使った塗料よりも耐用年数が数年長い塗料を屋根に使うと良いでしょう。
屋根は、紫外線や雨のダメージを外壁よりも多く受けるため、外壁よりも劣化が早い傾向にあるためです。
屋根塗装の業者選びのポイント
屋根塗装を行う業者の中には、残念ながら悪徳業者と呼ばれる人もいます。
トラブルを防ぎ、信頼できる業者を選ぶために、チェックしたいポイントを解説します。
現地調査がていねい
施工予定の場所をまんべんなく確認し、図面や写真に記録を残すなど、1時間程度かけてじっくり調査してくれるか確認しましょう。
素人が屋根に登るのは危険なため、施主が屋根の様子を直接見ることはできません。屋根の劣化状況を、写真やドローンや書面で目に見えるかたちで説明してくれる業者を選びましょう。
直接見られない部分を、目に見えるかたちにすることは、最低限必要なことと言えます。
見積書に内訳書が明記されているか
屋根塗装の工事の見積書は、工事内容の説明書にもなるものです。
施工される部分や面積が網羅され、「一式」や「坪」など曖昧な表現ではなく、「平米」表現で適切な数量が記載されているか確認しましょう。
業者によって表現はさまざまですが、破風板や棟板金、樋などは「m」が用いられることが多いです。
不安をあおったり契約を急かしたりしない
優良業者は、不安をあおったり契約を急かしたりしません。
優良業者は、施主が納得して契約できるように、見積もりを提出してから検討できる期間を設けてくれるものです。
もしも、訪問営業などの業者が下記のようなことを言ってきたら要注意です。
- このままでは雨漏りします!すぐに工事をしないと危険です!
- 今日この場で契約して頂ければ、期間限定のキャンペーン価格で工事できます!
- 火災保険を使えば無料で工事できます!
不安をあおる業者や契約を急かす業者、甘い言葉で誘惑する業者と契約を結ぶと、トラブルになりがちです。
国民生活センターには、このような業者とのトラブルの相談が数多く寄せられています。
※参考:国民生活センター 訪問販売によるリフォーム工事・点検商法
国民生活センター 「保険金を使って自己負担なく住宅修理ができる」と勧誘されてもすぐに契約しないようにしましょう!-加入・契約が増える秋台風シーズンは特に注意してください-
近隣への配慮をしてくれる
「近隣挨拶など近隣への配慮をしてくれるか」「近隣挨拶で、近所の人に何を説明してくれるか」などを確認しましょう。
最低限伝える必要があるのは、工程・工事内容・工事場所・工事責任者の連絡先です。
騒音や臭い、塗料の飛び散りが心配な塗装工事をトラブルなく行うために、近隣挨拶は必要不可欠です。
自社保証制度がある
自社保証制度とは、施工後に塗膜の剥がれなどの施工ミスが原因となる不良が起きた場合、無償で手直しをしてくれる制度のことです。
一般的に、保証期間は3~5年程度ですが、塗料のグレードに応じて10年ほどの保証制度を設けている業者もあります。
自社保証制度は、施工の精度を約束するものなので、契約前に内容と期間を確認しましょう。
実際に保証書を見せてもらうと安心です。
まとめ
屋根塗装の大まかな工程は以下です。
1. 足場架設・養生
2. 洗浄
3. クギ打ち
4. 下地処理
5. 下塗り
6. 中塗り・上塗り
7. 手直し・点検
8. 足場解体、片付け
具体的な作業内容は、屋根材の種類や状態によります。
屋根に合った適切な工事内容でていねいに施工してくれる優良業者を見つけることが大切です。
イエコマは、戸建て住宅の屋根塗装を承っております。
お客様のご希望に応じて、外壁・付帯部分をまとめて塗装することも、もちろん可能です。
- もう築10年以上経つし、塗装を検討したい
- 屋根の色あせや汚れが気になっている
- 今しっかりメンテナンスして、屋根を長持ちさせたい
上記のようにお考えの方は、イエコマまでお気軽にお問い合わせください。
お見積もりは無料です!