日頃何気なく使っているけれど、仕組みや原理はよくわからない。気づけば私たちの周りはそんな便利で不思議な家電だらけです。
仕組みがわからなくても使えるから、別に困らない? たしかにそうかも知れませんが、理解しておけば、もっと賢く使いこなす工夫が生まれますよ。
今回は、生活に必須ともいえる存在でありながら仕組みが少しわかりづらい…そんな「エアコン」について解説します。
機器内部の難しい仕組みまでわからなくとも、空気を循環させる仕組みや、「暖房」「冷房」「除湿」の違いについて知るだけで、効率のよいエアコンの使い方がわかります。
生活に欠かせない機器だからこそ、正しい知識を持ち、丁寧に長く使い続けましょう。
目次
エアコンの原理:なぜ室温を調節できるの?
エアコンで室内の温度を調節できるのはなぜでしょう。そこには、物質の状態変化を利用した仕組みがあります。
では、理科の復習も交えて説明していきましょう。
1)物質の状態変化とは
物質は、熱したり、冷やしたりすることで固体・液体・気体と状態を変えます。これを物質の状態変化といいます。
水を例にすると、
氷(固体) → 水(液体) → 水蒸気(気体)
という変化のことを指します。
矢印の方向は物質に熱を加えた場合の変化です。
物質の熱を放出させる、つまり冷やした場合の変化は逆向きに起こります。
エアコンは現代の最新システムによって、物質を状態変化させ、部屋を冷却、暖房する仕組みともいえます。
エアコンは、上手に物質の状態変化を利用しているわけです。
2)状態変化に伴う熱のやりとり
状態変化が起こるとき、物質は周囲から熱を奪ったり、放出したりしています。
液体から気体、気体から液体に変わる際に生じる熱の移動について、その仕組みを説明していきます。
液体から気体に変わる「蒸発」
液体が気体になる(蒸発する)ときは、周りの熱を奪っています。
道路に打ち水をすると周りの空気が冷えてきますが、これは水が蒸発するときに周囲の熱を奪うためです。
昔の人の知恵のように感じるかもしれませんが、冷却の際は、エアコンも同様に熱を逃がすという仕組みを用いて室内温度を下げているわけです。
気体から液体に変わる「凝縮」
気体が液体になる(凝縮する)ときは、周りに熱を放出します。
暑い室内に冷えた飲み物の入ったコップを置くと、コップの表面に水滴が付きますね。よく知られている「結露」という現象です。
これは、空気中の温かい水蒸気が冷たいコップに触れて水に変化しており、このとき、水蒸気はコップ表面へ熱を放出している(冷やされている)のです。
エアコンの冷房時は、室内の温かい空気を凝縮する際にエアコン機器の中で結露が発生します。この結露により発生した水を「ドレン水」と呼び、ドレン管という配管を通して屋外へ排出しています。よく、エアコンの室外機のホースから水がちょろちょろ流れているのを見たことがあるかと思います。
このように、ある物質が状態変化をするとき、周りの物質と熱をやりとりしているのです。
3)冷媒と空気で熱を交換する
エアコンの構成
エアコンは、部屋の壁や天井に取り付ける「室内機」と、ベランダなどに設置する「室外機」で構成されています。この二つをつないでいるのが、「冷媒管」です。
エアコンを壁に取り付けるとき、壁に穴をあけてホースのようなものを通しますね。このホースの中に冷媒管が入っています。
このことから、エアコンの室内機から部屋内の空気を取り込んで、ホースをつたって、室外機へ放出しているという仕組みが想像つくはずです。
冷媒の役割
冷媒管には、冷媒と呼ばれるガスが入っていて、室内機と室外機の間を循環しています。冷媒の役目は、空気の中にある「熱」を運ぶことです。
冷房時には部屋の熱を奪って屋外に放出し、暖房時には屋外の熱を奪って部屋に放出します。
では、どうやって熱を奪ったり、放出したりするのか?もうおわかりですね。
冷媒は、室内機・室外機の内部で蒸発または凝縮をすることで空気と熱のやりとりをしています。このやりとりを、「熱交換」といいます。
この熱交換の仕組みを用いて、エアコンは室内を冷やしたり、暖めたりができるのです。
余談ですが、エアコンをつけると空気が入れ替わっていると思う方もいます。しかし、熱交換はあっても、空気の換気機能はありませんので注意しましょう。
人間が呼吸によって二酸化炭素を放出させたり、風邪やインフルエンザなどの細菌が浮遊したりすることによって、空気は徐々によどんでいきます。
夏の暑い時期や冬の寒い時期でも、1時間に1度は換気をして、新鮮な空気を室内に取り込むよう心がけましょう。
4)室温を変える仕組み
室内機、室外機の内部には「ファン」と「熱交換器」というものがあります。
「ファン」は周りの空気を吸い、再び吐き出して風を送る装置です。つまり、扇風器のようなものです。
「熱交換器」は冷媒と空気との間で熱交換をさせる装置です。
冷房の場合のエアコンの動きを、順を追ってみてみましょう。
- 冷媒は、室内機で蒸発します。
- 冷媒は熱交換器を通して、室内機が吸った空気の熱を奪います。
- 室内機からは、熱を奪われた冷たい空気が室内に吐き出されます。
- 熱をもった冷媒は、冷媒管を通って室外機に移動します。
- そして室外機で凝縮されます。
- 冷媒は熱交換器を通して、室外機が吸った空気に熱を放出します。
これで、室内には元々の室温よりも冷えた空気が供給され、室外機からは熱風が出る…という仕組みです。
(余談ですが、この熱風がヒートアイランドの原因です。)
なお、暖房時にはこれと逆の動きをしています。
冷房と除湿の違いとは?
エアコンには、「暖房」「冷房」「除湿」の3つの機能があります。
暖房と冷房の違いはわかりやすいですが、冷房と除湿の違いはご存知でしょうか?
暑い夏には、冷房と除湿どちらをつけても快適に感じますが、それぞれに目的と効果が異なります。
「冷房」は、部屋の空気の温度を下げることを目的とした機能です。一方「除湿」は、部屋の空気の湿度を下げることを目的とした機能です。
使い分けのポイントは、まず部屋の温度と湿度を確認することです。
室温が高い真夏日などは冷房を使い、湿度が高くジメジメする梅雨の時期などは除湿を使いましょう。
また、除湿には「弱冷房除湿」と「再熱除湿」の2種類があります。
弱冷房除湿は、空気中の水分を取り除くために、冷やした空気をそのまま室内に戻す仕組みです。
再熱除湿は、水分を取り除いて冷えた空気を、適温に温めなおしてから室内に戻す仕組みになっています。
気温がそこまで上がらない梅雨の時期などには、室内が冷えすぎない再熱除湿がおすすめです。
ただし、再熱除湿は他と比べて消費電力が少し多くなります。
電気代を気にしている方は、可能な限り弱冷房除湿または高めの温度で冷房するなどで対処しましょう。
エアコンの故障の原因とは?
何年もエアコンを使用していると、さまざまな不具合が生じてきます。
不具合が起きる原因と対策について下に述べていきます。
エアコンから異音がする
エアコンの仕組みを知れたところで、長年エアコンを愛用していると、たまに異音がすることはありませんか。エアコンから異音がしたときに確認するべきポイントをご紹介します。
エアコンから異音がしているタイミングはエアコンを運転中でしょうか。それとも、エアコンを停止中でしょうか。
運転中に異音がする場合、室内機が正常に作動しているか、冷風がきちんと出ているかを確認しましょう。そのほか、室内機のランプは正常に点灯しているのかも確認する必要があります。
そのほか、フィルターの目詰まり、風の向きを調節するルーバーの作動不良の可能性があります。一度メンテナンスをすることをおすすめします。
さらに、エアコン異音は、音の種類によってもある程度、異常場所を推測することが可能です。
エアコンからキュルキュルという音がする場合
エアコンの異音でも、キュルキュルという音がする場合は室内ファンモーターのベアリングの故障による可能性が高いです。
ファン自体に、汚れやほこりが付着していて、作動を阻害している可能性もあります。
エアコンからカラカラという音がする場合
エアコンから発生するカラカラ音の場合には、ファン自体の軸のずれや、ベアリングのオイル不足などが考えられます。
一度、専門業者などでエアコンのメンテナンスをすることを、おすすめします。
エアコンからコンコンという音がする場合
エアコンからコンコンという音がする場合は、室内機の排水循環に異常をきたしている場合が多いです。室内の密閉性が高い場合に、起きやすい現象です。
このように、エアコンの異音と言っても、部品の異常から、稼働条件によって起きているものなどさまざまです。
それでも直らない場合は、エアコンの室内機についている送風ファン、もしくは室外機についているコンプレッサーが故障している可能性があります。その場合は、専門業者に確認してもらいましょう。
エアコンから出てくる空気が臭う
長年エアコンを使用していると、エアコンから出てくる風が臭いということはありませんか。実は、エアコンから出てくる風が臭い場合は、フィルターの奥にあるファンや熱交換器にカビが付着している可能性があります。また、フィルターに埃がたまったままになっていても同様に、臭いが発生します。
このような場合には、専門業者にクリーニングを依頼しましょう。
室内機から水漏れしている
冷房使用時の室内機から水漏れしている場合は、ドレン管からドレン水がうまく排水できていない可能性がります。この場合、ドレン管の内部に詰まりがないか、ドレン管が折れたりねじれたりしていないかを確認する必要があるので、専門業者に依頼しましょう。
もしくは、室内機のフィルターが汚れている可能性があるので、フィルターを掃除してみましょう。
エアコンが効きにくいときにチェックすること
せっかくエアコンを新調したのに、エアコンの効きが悪い。ホコリを取ってメンテナンスをしても直らない。そんなときは、以下の4つの原因が考えられます。
エアコンの調子が悪いときはチェックしてみましょう。
室外機の周囲に物が置いてある
室外機の周囲が、ガーデニングの道具やランドリーグッズなどの物で埋め尽くされていると、熱が室外機から逃げにくくなります。室外機から熱が逃げないと、空気の流れが悪くなり、エアコンが効きにくくなってしまうのです。
室外機に直射日光が当たっている
室外機に直射日光が当たっている場合も、室外機が熱を逃がすことができず、エアコンが効きにくくなってしまいます。
エアコンの能力がミスマッチ
大体のエアコンは、部屋の畳数に合わせて購入するようになっています。しかし実は、住宅の構造や部屋の機能によっては、一段階上のものを選んだ方がよい場合もあるのです。
例えば、木造住宅か鉄筋コンクリートの住宅か、最上階か中間階か、個室かキッチンか、など状況によって求められる性能が異なります。
エアコンを購入するときは、設置する部屋の環境を販売スタッフに伝え、相談して決めるようにしましょう。
エアコンから冷媒(ガス)漏れしている
エアコンは、冷媒を使って空気の熱交換を行っています。エアコン本体内部の熱交換器に霜が付いている、または室外機の細いパイプに霜が付いている場合は、冷媒漏れを起こしているので、専門業者に修理を依頼しましょう。
エアコンの買い替え時期とは?
エアコンの寿命は、大体10年程度といわれています。もし、購入してから10年近く経っていて、前章で述べた症状が出た場合は、修理するよりも本体ごと交換することをおすすめします。
使い方の工夫も知っておこう
エアコンの仕組みについて読んでいただきましたが、少し身近に感じていただけたでしょうか。
あわせて、「エアコンの電気料金、工夫して使えば快適&節約できる方法」もお読みいただけたらと思います。
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