雨漏りは、家の強度や耐久性にも悪影響を及ぼす深刻な問題なので、すぐに原因究明をして修理すべきトラブルです。
しかし、雨漏りは屋根以外の箇所から発生することもあり、安くない修理費用のため、修理に二の足を踏んでしまう人もいるでしょう。
そんなときに頼れるのは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で施工業者に義務付けられた瑕疵(かし)担保責任です。雨漏りはこの保証対象になっているため、修理することができることがあるのです。
ただ、新築か中古か、リフォームしているかなど条件によって保証される期間や、保証を受けられるかどうかが変わってきます。
この記事では、雨漏りの修理の際に受けられる保証の種類とその条件、注意点、雨漏りへの対策をまとめています。
この記事を読んで、修理を急がなければいけない雨漏りに備え、焦らず対応できるように準備をしてくださいね。
目次
雨漏りは早急に修理するべき問題
家で雨漏りしている場所を見つけた時点で、建物に深刻な問題が起き始めているかもしれません。
雨漏りしている場合、屋根・外壁・ベランダなどの雨風にさらされているところから壁の中や柱を伝い、部屋の中まで水の通り道ができます。雨が止んでも、壁の中などはすぐに乾きません。
そのため、壁の中や屋根裏など部屋の中からは見えない箇所に、問題が起きている可能性があります。
壁の中などの湿度が高くなり、木材の部分が腐ったりカビが生えたり、腐食した柱にシロアリが発生したりすることがあるのです。それにより、何十年と住み続けるマイホームの寿命が短くなるうえ、災害に対する耐久性が落ちます。
カビやシロアリが発生する前に、雨漏りは早く修理すべきなのです。
雨漏り修理には保証を使うことができる
新築の10年保証(契約不適合責任)
雨漏りの修理は、住宅会社に課せられた瑕疵担保責任により、住宅瑕疵担保責任保険を利用することができます。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)」により、新築住宅は、建物の引き渡しから10年間、瑕疵担保責任が定められています。
具体的には、基礎や柱などの「構造耐力上主要な部分」と、屋根や外壁などの「雨水の浸入を防止する部分」に瑕疵(欠陥や施工不良)があった場合は、施工会社が補償しなければならないとされているのです。
不法行為なら20年間責任追及できる
雨漏りが、施工会社や設計監理者が不法行為を行ったことが原因であると認められた場合には、最長で20年間、業者の責任を追及できるとされています。
過去には、雨水の浸入を防ぐ防水工事が適切に行われていなかったとして、損害賠償責任が認められた裁判例もあります。
部屋の中から見ていると、雨漏りは「雨が部屋の中にしみこんできただけ」のように感じる人もいるでしょう。しかし、実際には建物を支える重要な部分である柱を腐食させたり、鉄骨をさびつかせたりすることもあります。
そのため雨漏りは、法律が定める「構造耐力上主要な部分など」に影響を与える重大な問題とされ、保証対象となります。
新築ではなく、防水工事やリフォーム工事を行った場合には、別の保証制度を利用できることがあります。
日本防水協会の正会員である業者が行った防水工事では、「防水工事保証制度」が利用できます。使用する防水材料や施工方法などにより変わりますが、5年から最長25年の保証期間が設定されます。
住宅瑕疵担保責任保険協会が提供している、「リフォーム工事瑕疵保険」もあります。これは、リフォーム工事をしたすべての部分が対象になる保険です。
雨漏りなどによる「構造耐力上主要な部分など」の破損個所については、5年間保証されます。
これらは、工事業者が独自に設けている保証制度を補完するものであり、工事業者が加入するものです。業者選びの際は、こういった保証制度に加入しているかを確認するようにしましょう。
保証で雨漏り修理する際の注意点
専門家でないとわかりにくいので手抜きされるかもしれない
品確法によって、新築住宅に10年の保証期間が定められているのは、「10年で新築住宅に不具合が発生するのが異常事態だ」と想定されているからです。
つまり、10年以内に新築住宅で雨漏りが発生したときは、施工不良が原因である可能性が高いといえるのです。
しかし、家に住んでいても、表から見えない部分に問題があるかどうかは、専門家でもない限り分かりにくいもの。残念ながら、見えない部分だからと手抜き工事をする業者がいるのも事実です。
施工不良などが原因で雨漏りが発生した場合は、瑕疵担保責任を追及してしっかりと修理してもらいましょう。
当時の工事業者に言うだけでは不充分
保証を使って修理を依頼するときは、その家を建てた業者に連絡をします。リフォーム工事などで不具合があって保証で修理してもらうときも、その工事をした業者に連絡を取ります。
工事を手抜きしたり失敗した業者に、「根本的な原因を調査して、二度と雨漏りしないように修理して欲しい」と伝えても、それで完全な修理をしてくれるかは不安が残ります。
雨漏りを修理してもらっても、一度トラブルを起こした業者に、修理を完全に任せるのは不安に思う人も多いでしょう。
根本的な対策をしてもらうことができなければ、すぐに雨漏りが再発する恐れがあります。
雨漏り調査を行い雨漏りの原因を明確にする
大切なのは、当時の工事業者が言うことを鵜呑みにするのではなく、第三者の専門家にも調査してもらって、根本的な原因がどこにあるのかをはっきりさせることです。どのような修理が必要か、しっかりと確認しましょう。
雨漏り調査を別の業者に依頼し、実際に雨が降ったときを想定した「散水調査」まで行う雨漏り調査をすれば、どこから雨水が浸入しているかを特定することができます。目視だけで行う雨漏り調査よりも、より正確に雨漏りの原因を特定することができます。
第三者の専門家に雨漏り調査をしてもらっていて、根本的な原因を特定できていることがわかれば、保証対応で修理をする業者も今度は手抜きができず、きちんと修理をしてくれることでしょう。
施工業者が倒産していた場合にはどうする?
自宅を施工した業者が倒産してしまっているなどの場合はどうすればいいのでしょうか。
瑕疵担保責任義務のある事業者がいないと、工事してくれる業者がいないことになります。しかし、業者がいなくなった場合に備えた「住宅瑕疵担保履行法」という法律があります。
この法律は、住宅を施工した業者が倒産したあとに瑕疵が見つかった場合、修理費用をカバーしてくれるものです。
もし、業者と連絡が取れなくなっている場合でも安心です。
少しの雨漏りでも放置せずに対応をすべき
では、どれくらいの雨漏りだったら修理を検討すればよいのでしょうか。
壁や天井に少しだけ水が染み出しているぐらいだと、「これくらいなら、あまり心配しなくてもいいか」と思う人もいるかもしれません。
しかし、これは危険な考えです。
雨漏りしていることは、「屋根や外壁から家の中まで、水の通り道がある」ということです。その通り道がすべて水浸しになっている可能性もあります。
雨漏りしている場所まで水が到達する途中には、屋根裏の柱や壁の中の木材、鉄骨や金属の部品がたくさんあります。柱などが水を含んで腐食したり、金属がさびたりすると、住宅に必要な強度がなくなり、耐久性が落ちるのです。
壁や天井に染み出していなかっただけで、これまでも屋根裏や壁の内部には水分が入り続けていたのかもしれません。
長い間、柱や鉄骨が水浸しだったかもしれないので、少しでも雨漏りしているのを見つけた場合には、放置せずなるべく早急に対応することが大切です。
保証期間のうちに雨漏り点検しておくのも有効
新築住宅では10年の保証期間が終了する前に、雨漏りしているかどうかを確認しておくのもおすすめです。
雨漏りしているのに、表に出てこないせいで気づいていないこともありえます。雨漏りに気づいたのが保証期間終了後である場合は、瑕疵担保責任を事業者に追求して修理をしてもらうことはできません。
ハウスメーカーによっては、10年の保証期間が終了する前に点検するサービスを提供している場合もあります。そうでない施工業者の場合は、費用はかかりますが自費で点検をしておくのもよいでしょう。
雨漏りに気づかず放置して保証期間を過ぎてしまったら、構造耐力上主要な部分に被害が及んでいて大がかりな修理をすることになった際に、自費でしなければなりません。
保証対象外となる雨漏りもある
注意しておきたいのは、新築住宅の雨漏りでも、瑕疵担保責任の対象外のために責任を追及できず、保証を使って修理できない場合があることです。
保証が使えない場合は、修理費用を自分で支払わなければなりません。
ここでは、保証対象外となる例を4つ紹介します。
自然災害の場合
近年、台風や豪雨といった災害が多くなっていますが、自然災害で屋根や外壁に損傷を受けて発生した雨漏りは、保証対象外となります。
自然災害ではないですが、自然現象のような場合も保証対象外となります。枯れ葉が詰まるなどして雨漏りが発生したような場合が挙げられます。
普段から、家のメンテナンスはこまめにしておいた方がよいでしょう。
施工会社以外による修理やリフォーム
新築住宅を施工した会社以外が修理やリフォームをした場合には、その工事をした部分や建物全体が保証対象外となることがあります。
他社が工事をしたのであれば、施工業者が建物の耐久性などに責任を持つことができなくなるためです。
施工会社以外で修理やリフォームをする場合、その工事に関するトラブルは、前述の「防水工事保証制度」や「リフォーム工事瑕疵保険」で対応することとなります。
経年劣化
経年劣化による雨漏りも、保証対象外となります。どんなものでも時間の経過とともに劣化していくものなので、それを保証することはできないためです。
ただ、これは施工業者にとって、格好の言い訳材料になります。
専門的な知識がないからと、「この部品はこれくらいでダメになるものだ」と言って、経年劣化によるものだと主張してくるかもしれません。
しかし、品確法では「しっかりとした家を建てれば、10年くらいは大きな不具合が発生することはない」とし、10年保証と定めています。
施工業者から「経年劣化が原因」と言われた場合には、材料が不良品だったなど、施工上のミスがあったのかもしれません。施工業者の説明を額面通り受け取ってしまわないようにしましょう。
瑕疵担保責任の時効に注意
雨漏りの修理など、品確法の瑕疵担保責任には時効があります。
品確法の瑕疵担保責任における時効は、民法上の契約不適合責任の制度を適用するとされています。つまり、「瑕疵を知った時から1年以内に通知しないとき」は法律によって保護されず、瑕疵担保責任による修理を拒絶されるかもしれません。
雨漏りしているのに1年も放置しているということは、「住人はそれでいいと考えている」と推定されるのです。
「まだ時間はある」と先延ばしにせず、少しでも早く施工業者に連絡するようにしましょう。
雨漏りの原因
ここまで、雨漏りの修理についてお話してきましたが、雨漏りの原因を知っておくことも大切です。
修理のために雨漏りの原因を調査してもらっても、すみからすみまで原因究明されたかどうかわからなければ、その家を建てた業者または雨漏り調査した業者がいい加減な仕事をしていてもわからないからです。
雨漏りの原因、雨漏りしている箇所を探す方法、もしものときの応急処置方法などをまとめた記事がありますので、こちらも確認して、基本的な知識を知っておくようにしておきましょう。
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雨漏りへの対策
最後に、雨漏りへの対策として知っておいて欲しいことをお伝えしておきます。
外壁塗装で雨漏り対策ができるのか?
雨漏りは、家の外側から雨水がしみこんでくることで発生します。家の外側といっても、外壁とは限らず、屋根が原因である場合もあります。
屋根が雨漏りの原因である場合、「外壁塗装をすれば、雨漏りの修理ができる」と断言することはできません。仮に外壁が原因であったとしても、塗装だけで抑えられる程度であればいいですが、防水工事などをしないと対応できないケースもあります。
建物の内部まで水が浸入しているため、外壁や屋根の塗装だけで雨漏り対策が万全になるとは限らないと知っておきましょう。
火災保険で雨漏りの修理ができる場合もある
火災保険で雨漏りの修理に対応できる場合もあります。
品確法の保証対象外になる「自然災害」で、強風・落雷・豪雨・雪災などや飛来物が当たったことが原因で発生した雨漏りが対象です。
家財道具まで保険をかけている場合は、家財道具の被害も保証対象となります。
くわしくは、こちらのページをご覧ください。
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日頃からのメンテナンスで雨漏り対策
雨漏りしている場合にどうするかだけでなく、普段から、マイホームのメンテナンスをして、雨漏りが起きにくいように対策をしておくことも大切です。
雨漏りが起きやすい場所のチェックポイントや、自分でできる雨漏り対策法などを、こちらのページでまとめています。
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まとめ
雨漏りは、部屋の中から見れば、小さなトラブルに見えるかもしれません。しかし、その実情や原因を知ると、いかに深刻な問題なのかを知ってもらうことができたのではないでしょうか。
新築住宅であれば品確法による10年保証がありますが、中古住宅や修理した箇所であれば「リフォーム工事瑕疵保険」など、品確法以外の保証があるかを確認しておきましょう。
根本的な解決になる修理をしてもらえるよう、第三者の業者に雨漏り調査を依頼するなどしておくことも大切です。
マイホームという大切な財産だからこそ、上手に保証を使えるよう、ある程度の知識を持っておくようにしましょう。
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