天井から滴る水、湿った壁……雨漏りが生活に及ぼす影響は甚大です。壁や柱の腐食やシロアリの繁殖を招き、家屋や家財道具を劣化させてしまうほか、カビやダニが繁殖しアレルギー性鼻炎などの原因になるなど、健康被害も懸念されます。雨漏りを見つけたら、すぐに修理しなければと焦ることでしょう。
しかし、闇雲に修理業者に依頼したり、DIYで修理したりするのはかえって状況を悪化させる可能性があります。雨漏りの被害は、目に見えている範囲だけとは限らないからです。
効率的かつ効果的に雨漏りを解消するには事前調査が大切。原因や範囲を突き止めることで、最適な修理をすることができます。
雨漏り調査にはいくつかの種類があり、必要な費用にも差があります。知識がなければ、どの調査をしてくれる業者を選べばいいのか・費用が適切かどうかの判断は難しいですよね。
このコラムでは、雨漏り調査の方法と、費用について解説します。雨漏り調査に関する知識があれば、いざ雨漏りが発生したときでも、慌てずに順序立てて、解決までのプランが立てやすくなります。
あわせて雨漏りの主な原因や影響についても解説するので、参考にしてください。
雨漏り調査の種類
雨漏りの原因と影響を調べるには、方法や費用が異なるいくつかの調査があります。ひとつの方法で大まかな状況が判明するケースもありますが、さまざまな情報から総合的に判断し、より正確な状況を明らかにするため、複数の調査方法を用いることもできます。
代表的な調査を見ていきましょう。
目視調査
目視調査は、業者が屋根や外壁、室内の状況を目で見て調査し、雨水の浸入口や被害範囲を特定する方法です。熟練の業者であれば、雨漏りのおおまかな全容を目視調査だけで探り当てることができます。
雨漏りが影響を及ぼす可能性があるのは、壁の内側など目視ではわかりにくい場所も含まれます。それらは後述の他の調査方法で明らかになることがありますが、その下準備として目視調査が行われることも多いです。
メリット
特別な準備や道具がいらないので、時間や費用を抑えることができます。修理業者の中には「調査費用が無料」をセールスポイントとしている業者もありますが、対象となるのは目視調査の場合がほとんどです。
デメリット
どの程度の精度で雨漏りの状況を調査できるかは、調査にあたる業者ごと、さらには業者内での個人ごとの技術や経験に左右されやすくなります。
散水調査
散水調査とは、水を雨漏りが疑われる場所に流し、降雨時と似た状況を再現する調査です。実際に雨漏りを発生させることで、雨水の浸入箇所や家屋への影響を調べます。
雨漏り調査では一般的な方法で、雨漏り調査といえば散水調査を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
雨漏りの疑いが強い場所を絞り込むために、目視調査後に散水調査をセットで行うのがスタンダードです。
メリット
実際の雨漏りの状況を再現できるので、浸入口や経路の特定を目視調査より正確に調べることができます。
調査に使うのは水やホースなどで、後述の調査方法と異なり特殊な道具や機材を必要としません。目視調査と散水調査の組み合わせなら、他の雨漏り調査に比べて費用を抑えることが期待できます。
デメリット
調査に必要な水は、調査対象の建物の水道を利用することが基本です。調査費用と別に水道代がかかります。
すぐに雨漏りを再現・調査できれば短時間ですみますが、そうでない場合、雨漏りが発生する条件(雨水の量・雨にさらされる時間・雨の強弱や角度)をさまざまなパターンで試すので、時間がかかることがあります。時間や水道代を節約するためには、効率的に調査を進められる業者の熟練度が重要です。
雨漏り調査の代表的手法の散水調査について、必要性や調査内容をもっと知りたい方は、こちらのイエコマコラムを参照してください。
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発光液調査
発光液調査とは、紫外線に反応して発光する無色透明な検査液を、雨漏りが疑われる箇所に流し、発光の具合で雨漏りを調査する方法です。
調査に使われるのは「蛍光増白剤(けいこうぞうはくざい)」と呼ばれる液体で、白をより白く見えるようになることから、繊維や洗濯洗剤にも使われるなど安全性も確保しています。人体や建物への影響はありません。
メリット
漏水箇所ごとに異なる色の発光液を使用することで、雨水の浸入経路や被害範囲をわけて観察することできます。7色もの色を使い分けること(レインボービューシステム)も可能です。雨漏りが複数箇所発生している場合に真価を発揮します。
雨漏り調査では天候が実施の可否を左右することがありますが、発光液調査は天候の影響を受けず、スケジュール調整がより容易です。
※参考:一般社団法人全日本雨漏調査協会
デメリット
特殊な検査液を使うので、費用は高額です。
雨水の浸入口をある程度は特定する必要があるので、散水調査とセットとなることがほとんどです。より正確で迅速な散水調査をするためには業者の技術や経験が必要であり、効率的な発光液調査ができるかどうかにも影響します。
発光液調査について、より詳細な情報がほしい方は、こちらのイエコマコラムを参考にしてください。
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赤外線サーモグラフィー調査
赤外線サーモグラフィー調査とは、建物を外や中から赤外線カメラで撮影する調査方法です。赤外線放射エネルギーを検出し、温度変化を見ることで雨漏りを調査します。
温度の高いところは赤く、低いところは青く表示されるので、雨水の浸入がしている箇所や、通常よりも湿気の影響を強く受けている箇所は青く表示されます。
メリット
目視が難しい壁の内側や、予想外の経路で雨水が浸入している部分を調査することができます。
赤外線による温度変化は、テレビ番組の実験などで見たことがある人も多いでしょう。見た目のわかりやすさも相まって、依頼者も説明を受ければ被害状況を直感的に把握できるでしょう。
赤外線カメラでの撮影で調査するので、足場や高所作業車を必要としません。調査とは別に必要になる費用を抑えることができるうえ、作業自体の安全性も向上します。
デメリット
特殊な機材を使うので、費用は高額です。
雨漏りによる温度変化は、雨水が家屋に浸入しているときにしか起こらないため、天候に左右されやすい方法です。散水調査で雨を再現する方法もありますが、その分費用は上乗せされます。
建物や立地によって実施が難しい場合もあります。天気や日の当たり方、外壁や屋根の素材など、雨漏り以外の温度変化要因が強く影響するような建物では、正確な調査は困難です。また、住宅密集地など、距離をとって建物を撮影することが難しい場合も、赤外線カメラで一度に撮影できる範囲が小さくなるので、メリットを活かせなくなります。
赤外線サーモグラフィー調査についてもっとくわしく知りたい方は、こちらのイエコマコラムを参照してください。
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香料調査・ガス調査
香料調査またはガス調査は、室内にガスや香り付きの空気を入れ、室外のセンサーで感知する方法です。雨漏りがあればその経路をたどって空気が室外にまで届き、センサーが反応します。強く感知される場所があれば、その近くに雨漏りの浸入口があると予測できます。
メリット
ガスや空気を室内に入れるだけですむので、散水や降雨後など雨漏りの状況を再現する必要がありません。
デメリット
室内に入れるガスや空気、それを送り込むコンプレッサー、室外のセンサーなどが必要で、費用も安くはありません。
雨漏り調査の費用
主な雨漏り調査の費用を紹介します。
あくまで目安であり、業者や調査対象の建物の規模や状態によって目安を上回る・下回ることがありますのでご注意ください。
調査 | 費用 |
目視調査 | 無料~3万円 |
散水調査 | 5万~20万円 |
発光液調査 | 12万~25万円 |
赤外線サーモグラフィー調査 | 20万~35万円 |
香料調査・ガス調査 | 15万~35万円 |
別途費用が必要になる場合
屋根や2階以上の外壁など、高所での作業になる場合、仮設足場や高所作業車のための費用が必要になります。
仮設足場の相場は、1平方メートルあたり約1200円。
高所作業車は1日約5万円ほどです。
どのような条件になると仮設足場や高所作業車が必要になるかは、雨漏り調査を依頼する前に業者に確認しておくと安心です。
他にも、遠方への出張調査費がかかる場合もあります。こちらも事前に確認しておきましょう。
「無料調査」で注意すること
「雨漏り調査は無料です」と聞くととてもお得に思えますが、注意する点があります。
無料調査は基本的には目視調査だけの業者がほとんどです。追加で他の調査が必要になれば、その費用は別途発生するでしょう。
前述のとおり、目視調査では業者の技量がどれだけ正確に雨漏りを調査できるかの鍵になります。不十分な調査で終われば、修理見積もりの正確性も定かではなくなり、修理を進めるうちに追加費用が膨らむ可能性も考えられます。
無料調査の条件を確認することも大切です。調査箇所や調査時間に制限があり、想定している範囲の調査をすべて行う場合には、無料にならない場合があります。業者の選定や事前の調整をしっかり行いましょう。
雨漏り調査の費用や雨漏り対策など、雨漏りについて総合的な情報はこちらのイエコマコラムを参考にしてください。
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雨漏りの原因とは?
雨漏りというと屋根に原因があるとイメージしがちですが、他にもさまざまな原因により、雨水は家屋へ浸入します。
屋根
屋根材が、経年劣化や台風など自然災害の影響で破損やひび割れを起こすと、雨漏りが発生することがあります。建物のすべての部分に該当することですが、施工不良が雨漏りのきっかけになることも。
きちんとメンテナンスをしているかどうかも原因のひとつ。金属屋根やスレート屋根は、塗装を含め定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスをしなければカビや苔の発生など屋根材の状態を悪化させ、雨漏りをはじめとするトラブルの原因になりがちです。屋根材として耐久性の高い瓦も、漆喰(しっくい)の劣化や瓦のズレが原因となり雨漏りが起きる可能性があります。
棟板金(スレート屋根や金属屋根の頂点に設置されている板金)にも注意を向けましょう。クギの浮きやそれに伴う板のズレや浮き、自然災害による破損などが雨漏りにつながります。
屋根材や状況に応じた対応が必要です。
外壁
経年劣化や雨、雪のダメージが蓄積され、外壁にひび割れが起こる場合があります。
壁面の断熱材に水分が吸収されるなどして発見が難しいケースもあり、多湿環境でカビが発生しやすくなる・木材が腐食するなどの被害が知らぬ間に進行することがあります。
ベランダ
ベランダの床材の防水加工やコーキング(目地材)が劣化して亀裂が発生、室内への雨水の浸入を許してしまい、雨漏りが発生します。
ベランダから雨水を適切に排出する排水口が詰まっていると、ベランダに雨水が溜まった状態が長く続き、劣化に拍車をかけることがあります。簡単な詰まりならDIYで解消可能です。
サッシ
サッシや窓枠に使われているコーキングは経年劣化するとひび割れが発生し、水が浸入しやすくなります。
サッシや窓枠自体も雨漏りの原因のひとつ。日々の開閉や経年劣化により変形・破損することで雨漏りが発生する可能性があります。
雨樋
盲点となりやすいのが、雨樋でしょう。屋根に集まった雨水を適切に排水するための設備ですが、詰まりや破損が起きると、水がうまく流れなくなります。本来排水されるはずの水がベランダや外壁に流れ込んでしまう(オーバーフロー)ことで、劣化を早めて雨漏りの原因になるかもしれません。
雨漏りまでいかなくとも、水があちこちから溢れ落ちてしまうため、カビが好む湿度の高い環境を作ってしまいます。
簡単な掃除や補修工事で状況が改善できることがあります。
雨漏りの原因や、個人でできる対策などについてくわしくは、以下のイエコマコラムを参照してください。
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雨漏りを放置するとどうなる?
「水滴が落ちているわけじゃないから」
「シミくらい気にしないよ」
と雨漏りを軽視し、そのまま放置しているとどのような影響があるのでしょうか。
構造の劣化
雨漏りの影響は、目に見える範囲にとどまりません。壁や柱、床下などに水分や湿気がこもりやすくなると、カビや害虫の発生を招き、木材の腐食を進行させる可能性があります。
家屋の寿命が縮まると、早期の建て替えやリフォームに迫られたり、資産価値が低下したりすることも想定されます。
修理費用が高額になる
雨漏りによる侵食を許したことで、いざ被害に気づいて雨漏り修理をしようとしても、想像以上の規模の修理が必要になるかもしれません。当然、費用も高額になります。
なお、台風や風雪などの自然災害の影響で雨漏りが発生した場合は、火災保険の「風災、雹(ひょう)災、雪災」補償により、修理費用が保険の適用対象となる場合がありますので、契約内容を確認しておくことをおすすめします。
家財・電気設備への影響
雨漏りの水や湿気が家財道具や家電を濡らし、劣化や故障の原因となります。壁際のタンスや棚の裏は湿気の温床となりがちで、カビが好む環境です。
家中に配線された電気設備にとっても、雨漏りによる漏水や湿気は大敵。漏電を引き起こす可能性があります。
害虫の発生
木材を食い荒らす害虫といえば、シロアリです。湿気を含み、柔らかい木材はシロアリが好む食材です。雨漏りが発生すると、よりシロアリが発生しやすい条件がそろいます。
人体への影響
雨漏りにより、家屋に湿気がこもりやすい環境になると、カビが発生しやすくなります。カビが増えるにつれて、カビをエサとするダニの繁殖にもつながります。
カビやダニは人体にとって、アレルギー性鼻炎や喘息の原因になる厄介な存在です。
カビやダニが大量に発生している家に住むのは気持ちのいいことではありませんから、精神的にもストレスがかかります。
雨漏りを放置してしまった際の影響についてくわしくは、こちらのイエコマコラムをご覧ください。
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雨漏りの修理業者を選ぶ注意点
一時的に雨漏りをしのぐ応急処置は別としても、本格的な雨漏りの調査や修理はプロに任せるのが一番です。
しかし、ただ闇雲に選ぶと、悪徳業者に遭遇することも考えられます。雨漏りの修理業者を選ぶ際の注意点を知っておき、後悔するような事態になるリスクを軽減しましょう。
家を建てた業者なら安心?
「家を建てたのは○○だから、どこよりも知っているだろう」と考えて、家を建てた業者なら安心と思っていませんか?
もちろんそのようなケースもあるでしょうが、基本的には家を建てる技術と雨漏り調査・雨漏り修理の技術は異なると考えましょう。
ホームページなどに過去の実績が記載されていることがあり、依頼をするときの参考になりますが、見るべきは建築の実績ではなく、修理の実績です。技術と実績があり、口コミの評判がいい業者なら、ある程度安心できます。
ただし、築10年以内の場合なら、住宅瑕疵(かし)担保責任(住宅の引き渡しから10年間は発覚した瑕疵に対しての責任を施工業者が負う)があるため、施工業者の負担で修理できる場合があります。
屋根に上がる調査をしてくれる?
無料で行う業者も多い目視調査ですが、どれくらい力を入れて目視調査をしてくれるかは業者によって異なります。
すぐに修理の契約に持ち込みたい業者の中には、屋根に上がらずに調査を済ませてしまう、本当に調査をしたのか疑わしいケースも。
どんな方法で調査をするのか、雨漏り調査を依頼する前に確認しておきましょう。
原因を特定したあとに修理をはじめている?
調査を重ね、きちんと原因を特定してから修理をはじめないと、本質的な意味での修理にはなりません。屋根や壁に空いた穴やヒビを埋めるだけでは表面的な修理に終わっている可能性があるからです。見落とした雨漏り箇所もあるかもしれません。
雨漏りの再発や、見えない部分の腐食やカビの繁殖につながるので、原因究明をしっかり行う業者を選びましょう。
アフターフォローはある?
雨漏り修理を施工する業者に、アフターフォローの有無があるかは要チェックです。
修理が不十分で雨漏りが再発したときに、アフターフォローや保証があれば費用をかけずに修理できる可能性がありますが、無ければ再度修理費用を払わないといけなくなるかもしれません。
優良な雨漏り修理業者の探し方
優良な雨漏り業者と出会うためには、優良業者がどのような特徴を持っているのか、どのような選び方をすればいいのかを知ることが大切です。
それと同じくらい、悪徳業者がどのような手段でコンタクトを取ってくるか、契約させようとするかを知ることも大切です。
これらについてくわしくは、以下のイエコマコラムを参考にしてください。
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2020.10.26イエコマ編集部
まとめ
雨漏り調査には複数の種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
雨漏りの原因は屋根などわかりやすい部分だけではないので、アプローチの違う調査を組み合わせることで、より正確な雨漏りの影響を明らかにすることが期待できます。
調査や修理を行わずに雨漏りを放置すると、建物の損傷や住人の健康被害など取り返しのつかない被害になるかもしれません。まずは早急に調査を行うことが大切です。
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